JKのスクバ選び

スクールバッグ
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 「ねえねえ!このスクバ可愛くない?」

 子が、持っていたスマホをこちらに向け、同意を求めて来た。
スクバって何?と聞くと、どうやらスクールバッグのことらしい。
今時の子は何でもかんでも言葉を短縮するから、四十越えたおばさんには、こうしていちいち翻訳して貰わなければ、会話もままならない。


スクバはJKにとってアクセのひとつ

 中学までは、皆同じ制服に同じ靴にバッグ。
校則ではボブより長ければ黒いゴムでくくる。
靴下も、無地の白か黒。
右見ても左見ても、皆同じ格好で。
それは、思春期特有の情緒不安定さやちょっと目を離せば行き過ぎた行動を取ってしまう彼らを、校則という分かりやすいルールをもって抑制させる為に必要不可欠なものだったのだろう。
 高校になれば、学校によって多少の違いはあるだろうけれど、中学よりもぐっと自由度が上がる。
持ち物一つとっても、ざっくばらんとしたルールの元ならば好きな物を持って行っても良い。
その一つが、スクバなのだ。

リュック型ボストン型ショルダー型

 子は、インスタを見ながらあれこれ迷っているようだった。

「リュックがいいんじゃない?荷物も入るし、両手空いてた方が楽だし。」

「んー。でもなんか気分変わらない。これ、可愛いんだけど。荷物厳しいかな。」

子は、A4サイズ縦型のショルダーバッグが気に入ったようだ。
なんだか見たことがある。
道行く女子高生がよく持ってるブランドのもの。
だが、これだと教科書と弁当と・・全部入るように思えない。

「使い分けとかしたいな。バッグ、2個欲しい!」

「リュックはまだ使えるし。違う形のを1個買って使い分け出来るんじゃない?」

「えー。3年間使ってたしボロボロだよ。それに、中学の時と今は好みも違うし。」

「パパに相談ね。」

 子は、昔の私に似て来た。
物欲が止まらない。そして、その欲の基準は自分自身の中になく周囲の影響をモロに受ける。
流行りだからとか、友達が持ってるからだとかー
今の子だと、都内のイケてる女子高生が持ってるからーというところだろう。


私立高校に行ったと思えば安いもの

 早速、子はパパにおねだり。
すると、あっさりOK。拍子抜け。

「まぁ、私立行ったと思えばな。都立合格してくれたんだし。バッグくらい何個だって買ってやるよ。」

 確かにー言われてみればその通り。
もし都立不合格で滑り止めの私立へ行くことになっていたら、3年間で掛かる費用は桁違い。
私立ならば、支援金を引いても150~250万円は自腹で支払わなければならないのだ。
それに比べて都立。入学金や制服等の費用、授業料を入れてもトータル60万円程。
支援金を受けるのなら、30万円程で事足りる。
1つ5000円程度のスクバなんて、いくらでも買ってやるという気持ちにもなる。

私のスクールバッグ

 ふと思い出した、私のスクールバッグ。
実母に勧められるまま、好きでもないバッグを買った。
ルーズソックス全盛期のあの時代。
バッグは布製の大きな肩掛けトートが流行っていたのだ。

「何、これ。野暮ったい。ちゃんとしたもの買いなさいよ。」

私が欲しかったトートは却下、母の選んだ革製のバッグ。
当時、実家も段々と生活が厳しくなり、良いものを買うことに子どもながら抵抗があった。革なんかじゃなくてもいい。むしろ、流行りのトートがいい。
しかし、

「こんな貧乏くさいバッグ持たせてたら、私が笑われるわよ。」

 母希望の高校に進学出来なかった私。
本当なら、その高校の制服をまとった娘を近所に見せびらかしたかったのだろう。
それが叶わなかったから、せめて見た目くらいはと、持ち物すべてに口出しされた。
 布や合皮は質が悪いからNGだと、革一択。
しかし、それを毎日持って通う身になれば分かる、バッグは軽いに越したことはないのだ。
デザインも、なんだか銀行員のおばさんが持つような地味なもので。
そう、当時の女子高生からしたら「ダサい」バッグ。
しかし、母世代からしたら「センスの良い」バッグ。
洋服だってなんだって、母は自分のセンスを信じて疑わず、私の意思で選ぶもの殆どにケチをつけた。

ーおばさん臭いわね
ー何それ?全然似合わない。野暮ったい!
ーまた同じようなもの選んでる

 次第に、母の前で欲しいものを手に取ることが怖くなっていた。
何を選んでもダメ出しされる、拒絶され馬鹿にされると思うと、もう人形のように言いなりになる方が楽だったのだ。
結局、私は母が選んだ「センスの良い」バッグを3年間使用した。

 そんな苦い記憶が蘇りつつも、子はまだ恵まれているなと思う。
好きなバッグを選べる自由。
買ってもらえる環境。
欲しいものを欲しいと躊躇なく言えること。

好きなバッグを持って、花の高校生活を謳歌して欲しい。



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