引継ぎ1週間

蕎麦 仕事
スポンサーリンク

 初出勤を終え、早くも後悔。
一人事務、やっぱり無理かも。
退職予定の事務さんは、アラサーくらいだろうか。小柄で可愛らしい感じの人。
社長やその他従業員らとも気さくに話しており、滝崎さんなので皆から「タッキー」と呼ばれている。
ほっとしたのも束の間、引継ぎ期間1か月と面接で聞いたけれど、実質は有給を使うので1週間程。
業務内容は多岐に渡る。社長からは「簡単な事務」と聞いていたけれど、本当にそうなのか?
実際渡された膨大な書類を前にプチパニック。
零細企業だから、経理から人事、それに総務やその他の雑用等、やるべきことが多い。
空いた時間、ぱらぱら書類を眺めてみたけれど、そのマニュアルらしきものに目を通したところで説明を受けなくては分かりそうもない業務がわんさか。
あっという間に午前が終わり、昼食時はまったく食欲が湧かず、もう帰りたい気分。


「一緒に昼、食べましょう。」


 滝崎さんに誘われ、初ランチは職場近くのお蕎麦屋さんへ。
彼女は、この小さな会社に勤めてまだ1年足らず。元々別の会社で正社員の事務をしていたのだが、彼氏と婚約をしたことで、結婚準備もしたく自宅からも近い今の職場にパートとして入社したのだと言う。

「パートだからもっと楽かと思ってたんですけどね。結構忙しくて。夏に挙式挙げるんですけど準備もギリギリで。本当は妊娠するまで働くつもりでここに入ったんですけどね、ちょっと無理かなって。」


 冷たいざるそばを飲み込むのに、時間が掛かる。
飲み込みが遅い自分を想像しながら彼女の話を聞いていたからだ。
それから、彼女の有給消化の日は新人の私と相談して決めると社長に伝えたらしく、希望を聞かれた。
飛び飛びで出勤し、引き継ぎをしながら退職の流れかー、それとも一気に一週間引継ぎをし、残りは一人で頑張るか。
どちらが良いか聞かれたところで、正直どちらも自信が無い。
それでも、まだ飛び飛びの方が良いと思い、そう伝える。
何か分からない業務が出来た時、聞きやすいのはそちらだと思えたから。

なので、明後日はいきなりの一人勤務となる。
彼女の話では、面接の時に聞いた話と違って誰にでも出来る仕事では無さそうで気が滅入る。



タイトルとURLをコピーしました