母の日が近付き、何が欲しいかリクエストを聞いた。
なぜなら、去年良かれと思い渡したプレゼントが微妙だったと聞かされたから。
半年くらい経って、趣味があるし自分で選びたいと言われたのだ。
欲しがっていたカートを贈れば不良品だと言われたり、クッキーなどの菓子類は糖質カットの生活をしているから困るだとか。
素直に「ありがとう」と言ってくれたらいいのに。
私だったらそうするのにー子どものその気持ちが嬉しいのにーとモヤモヤする。
だが、親子であっても別人格。母と私もそう、私と子も然り。
「実の娘だからはっきり言うのよ。だって、折角お金遣わすのに悪いじゃない?どうせなら使うものだったり食べるものじゃないと。」
一理あるけれど、あまりにもストレート過ぎて、遠回しに現金を要求しているのか?とすら思えて来るのだ。
「終活じゃないけど、もう物は要らないわ。むしろこれから処分していかないとならないし。お金使わなくていいわよ。」
その言葉を素直に受け取って、本当に母の日をスルーして良いものなのか悩む。
なぜなら、
「姉さん、またN恵と旅行行くんだって。旦那に子ども達は預けるらしいわよ。本当に子煩悩な旦那よね。姉さんも、あちこち体が辛いって言いながらも楽しみにしてたわよ。」
物より思い出ー伯母が羨ましいのだと思う。
本音では、旅行のプレゼントが欲しいのだ。だが、さすがにそれを直に伝えてくる程、母は素直ではない。
察してちゃんなのだ。
勿論、旅費だってすべてN恵持ち。そんなの私には無理な話。それに、金はなんとかなったとしても夫の渋る表情が浮かぶ。
夫は、私と母が頻繁に会うことを嫌うのだ。
「伯母さんから電話あったの?」
「いや、N恵と姉さんと3人で会ったのよ。あんたも誘ったってN恵言ってたけど、断ったんだってね。N恵、いったん仕事辞めるみたいよ。上の子、折角エスカレーターで小中行くと思ってたのにね。なんかいざこざがあったりで学校の質も蓋を開けてみたら色々思うところがあったみたい。また別のところに受験し直すみたいね。しばらくは主婦に専念するってさ。」
この間、電話で話した時はそんな話題など微塵も出なかった。
学校関連でのママ友の愚痴が随分多い気がしたけれど、そこまで深刻そうでもなかった。
姪っ子の成績もまずまずだと言っていたし、学校に関しての文句は無かったはずだ。
まさか、ママ友関係が原因で中学受験をすることにしたのか?だとしたら、余りにも幼稚過ぎる。
こんな私ですら、何度も何度も学校を変えられるなら変えたい、別の地に引っ越して人間関係やり直したいと思っていたけれど。
思うだけで実際に我が子の人生を変えてまで自分の気持ちを優先などしなかったのに。
「N恵、あんたと違ってフルで働いてたし子どもも2人いるしまだ小さいし、無理し過ぎたのよ。可哀想に、頑張り過ぎたのね。鬱になりでもしたら大変だし、お金もあるんだからゆっくり休んだ方がいいのよ。今は、子どもに向き合う時期!母親業に専念しないとね!」
「そうだね。」
「で、あんたの方はどうなの?相変わらず無職?」
「仕事、決まったよ。」
少しの間があり、根掘り葉掘り聞かれる。誰もが知る一流企業以外の会社はすべて雑魚とでも言わんばかりで、会社名を伝えても無意味なので仕事内容だけ伝えた。
そしてフルタイムではないことを伝えると、N恵同様、子どもももう大きいのにさぼっていると思うのか、
「あんた、もう花子も大きいのにそれで働いたうちに入るの?私があんたぐらいの時は週5フルで仕事してたわよ。朝から夕方までびっちりね。それくらいじゃないと働くなんて言わないわよ。まるで習い事じゃないの。」
ーピー!!
突然、電話から音が鳴り、それが電池切れということに気付く。
「ごめん、充電なくなる、またね!」
タイミング良く切ることが出来た。時計を見ると、なんと3時間弱の会話。
これなら会いに行き話した方が良かったかもーと思ったけれど、そうなるとますます帰るタイミングを失いどっと疲れ果ててしまう。
折角のリフレッシュ期間、自分の為に使いたい。
結局、母の日のプレゼントはどうするか、一番の用件は据え置きとなってしまう。母の本当の心は分かっても、叶えられない。だから、それに気付かない鈍感な娘を演じ続けるのだ。