愛情という名の付加価値

スターバックス
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 高校生の小遣いが5000円は足りない?
去年に比べれば、寄り道は減った子。
仲良しとクラスが離れ離れになったこともあり、出歩く機会が少なくなったからだ。
それでも、コスメや雑貨、それにひっ迫しているのがスタバ代。
テスト勉強をするのに、スタバだと集中出来るからーという理由で小遣いUPを要求して来たのだ。

「塾の自習室使えばいいじゃないの。なんでわざわざスタバなの?むしろうるさいし集中出来ないでしょ?」


「違うんだって!あの空間が落ち着くの。それに、友達も一緒だし。」


 去年、同クラだった親友とは塾が違うのだ。
彼女の家は子が言うにはお金持ちらしい。自宅に泊まらせてもらったこともあるけれど、立派な一軒家だったそうだ。それに、自家用車がボルボだとか。ボルボの価格は分からないけれど、外車だしきっと高級車なのだろう。父親が会社経営をしていると聞いた。
同じ自営でも、赤字続きの我が家とは雲泥の差。

「修学旅行でお金、浮くじゃん。」

 さすがにこの言葉にはカチンと来た。
まるで、経済的に旅行に行かせられなかったかのように話をすり替えられている、そんな気がしたからだ。

「旅行は自分が行かないって決めたんじゃないの?ママ達が頼んで欠席にしたわけじゃないよ。修学旅行のお金とスタバ代を一緒にしないで!」

 突然の剣幕に、子も怯む。
少しの間があってから、今度はふてる。その態度に、つい口が勝手に捲し立てる。

「あのね、勘違いしないで。うちは腐るほどお金がある訳じゃないし、むしろ今大変なの。ニュース観てる?どこもかしこも物価高で大変なのね。それはうちに限ったことじゃないの。塾代だって、これから大学に行くのならその学費だって、まだまだあなたにお金は掛かるの。ママだってパートを掛け持ちしようとしてるの。明日はその面接なの。牛乳1本買うのだってあちこちスーパー回って安いとこ探すし、あなた達にはちゃんとお弁当作ってるけど、ママは一食分抜いたり余った食パンにマヨネーズだけ塗って食べたり。とにかく節約してるの。あなたが好きなアボカドだって、ママだって大好きだけど。我慢して1個しか買わない。それでも追い付かないの。パパが前の仕事の時みたいに安定してないから。」


 はっと我に返った時には遅い。
父親の悪口は言わないー実母からそれは学び、我が子にはそうしていこうと決めていたのに。
怒りに任せてぽろっと出てしまった。


「パパ、仕事うまくいってないの?」


 夫は見え張りだ。
子には金銭面で心配させたくないこともあり、家の中では余裕ぶった風に見せる。
メルカリであくせく私が小銭稼ぎしていれば、


「そんな面倒なことやってないで、捨てちゃえよ。」

 仕事帰りには、いまだに定価でビールやつまみをコンビニで買うし、今でこそ以前より頻度は少なくなったけれど、セレクトショップでの服やゴルフクラブ等の購入。
それについこの間は、新しいiPhoneを分割払いでカードで購入した。抜けないのだ。そもそものお坊ちゃま体質が。
そしてその血を子も引き継ぐものだから質が悪い。


「そう、パパはあなたに言えないだけで本当は大変なの。正直、毎月貯金を切り崩してる。本当に大学だってこのままだと奨学金になるかもしれない。だから、分かって。我儘言わないでよ。」


「・・・じゃあ、やっぱり修学旅行辞めて良かったよ。」


 なかなか子に届かない想いが歯痒い。
そういうことじゃないのだ。
塾代も、ピアノ代も、矯正代も、我が子に掛かるそのどの費用だって惜しくない。
それは先の見えない投資だけれど、生活が苦しい中でもそこに掛けているという愛情の付加価値。それを分かって欲しい。
子が望むのであれば、もし手持ちが無かったとして、借金をしてでも修学旅行に行かせるだろう。
私達が自分の価値を売り得る対価の行き先は、子がいる親にとって愛情という名の支払いに尽きる。
スタバコーヒー1杯の付加価値と比較するものじゃないのだ。







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