仮入部

テニスラケット
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 学校が始まり、早くも部活選び。
子は、テニス部だったので再び同じ部活に入るのだろうか?
放課後、同中の友達と部活周りをしたようだが、自分の思う通りに事が進まず苛ついているようだった。


サッカー部マネージャー

 一緒にテニス部に入ろうと約束していた同中の友達。
彼女の友達ー、入学式でも挨拶したあの子が、熱心にサッカー部のマネージャになろうと誘ってくるのだと言う。
そして、同中の友達もサッカー観戦が趣味。意気投合し、子は付いていけなかったらしい。
一応、見学には一緒に行ったらしいのだけれど、二人は既に仮入手続きを済ませてしまい、子だけが取り残される形となった。

「私、サッカー興味ないし。ルールもよく分からないし。」

 女子3人という奇数問題。
そして案外、子は流されることなく自分の意思を貫くタイプなのだなと我が子ながらに新たな発見。
要するに、同中の友達の友達と合わないのだろう。
そもそもその子がサッカー部に好きな男子がいるというだけで入部希望らしく、そんな不純な動機で部活を決めるなんてーと、子はドン引きだったようだ。
ただ、同中の友達は小さい頃から兄弟がサッカーをしている影響で、その世界に詳しく興味もあると言う。
新しいことに挑戦したいという友達の気持ちを制することなど出来ない。
子は、今一つ強引に出ることが出来ない。私と同じ性格。
去る者追わず―来る者拒まずといった感じ。
結局、彼女らと同じ部活に入部することは諦めたようだった。

仮入部

 翌日の部活見学。
しかし、子は真っ直ぐに帰宅した。
時間割通りの下校だったので、

「え?早くない?部活見学は?」

「行かなかった。」

 恐らく、同中の友達はサッカー部マネージャーに決めてしまい、一緒に部活見学をする子もおらず、足が向かなかったのだろう。
本人に聞いてはいないけれど、その暗い疲れ切った表情がすべてを物語っていた。
このままの流れでどこにも入部しないことになるかもーと不安になるけれど、子が決めること。
その選択が、子にとって良くないものであっても、自分で選択することが今は大事。
もう、高校生なのだ。
まだ仮入期間はあるのだし、色々とアドバイスをしたい気持ちを抑え、静かに見守ることにした。


帰宅部という選択もあり

 正直、私は帰宅部でも良いと思っている。
無理して自分を偽って、放課後まで頑張る必要はないのだ。
部活で汗をかいた青春!!なんてー、そりゃあキラキラしているかもしれないけれど、そのノリに付いていけない者だっているのだ。
ただ、何か楽しい熱中出来るものを見付けてくれたらいいなーとは思うけれど。
推し活だっていい。学校に熱中出来るものが無ければ、外の世界で見付けたって。


「え?仮入行かなかった?帰宅部なんて駄目だ、駄目。バイトでもする気か?小遣いは渡すからバイトだけはやめてくれよ。」

夫は、帰宅部ーというよりバイトには反対のようだ。
そして、何もせずにダラダラ青春時代を過ごすのは勿体ないと。

「何かしら部活に入らないと、高校生活詰まらないぞ。友達も出来ないぞ。」

 今どのような状況なのか分かっていない夫は、デリケートな領域にズカズカと踏み込んで来るのだ。
子が、何とも言えない表情をしたのを目にし、

「明日も早いし、慣れない生活で疲れてるんだからもう寝た方がいいわよ。」

 そう声を掛け、寝室へ行かせた。
夫と二人きりになり、ここ数日で子に起きていることを伝えた。

「中学ではうまくやってたんだから大丈夫だろう。あなたもいちいち気にしいだから、花子に伝線するんだよ。知り合いがいなくても、取り敢えず部活入っとけば後から友達なんて付いてくるって。」

 夫は楽観的だ。恐らく、自分がそのやり方でうまくいっていた裏付けがあるのだろうけれど。
しかし、子は100%夫の遺伝子を継いでいる訳ではない。半分は私だ。悲しいかなコミュ障な私の遺伝子。

 ただ、子は中学ではテニス部に入り、その生活を楽しんでいた。
なので勿体ないなという思いもある。
せめて、テニス部を見学してみてはどうかと思うのだけれど。
同中の友達に裏切られたことでショックを受けたのか、テニスなんてやりたくないと言い出したのだ。
今、我が子はだいぶ視野が狭くなってしまっている。



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