ドロップアウト

カレーライス
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 ここ最近、登校出来ていた子。
クラス替えで躓いて修学旅行も欠席したのだけれど、1年の頃の友達が所謂今でいう「陽キャ」の子達ばかりだったこともあり、行き渋り程度。
波はあるものの、年明けからは順調だったのに、今朝は駄目だった。

 子ども部屋を覗くと、布団にくるまったままの子。
何度か声を掛けても反応が無いので、体を揺すってみるが眠そうな唸り声が返って来るだけ。

「学校、遅刻するよ!」

「んー、気分悪い・・」

「え?熱あるの?」


 額に手を当てるが何ともない。ただ喉が痛いと言うし鼻を啜っているので風邪かインフルの前兆!?と思い休ませることにした。

昼になり、私は午後からコールセンターのパートがあるので身支度をしていると子がのっそり起きて来て、お腹が減ったと言う。
朝ご飯は手付かずのままだったので、それを温めて食べてくれと言うと嫌そうな顔。

「お金頂戴。マック食べたいから買ってくる。」

「マック?具合悪いんじゃないの?」

「寝たら治った。」

 睡眠不足?さぼり?体調不良ではなかったのか?

「喉は?」

「痛いよ、多分、花粉症。」


 はぁ?仕事前だったこともあり、振り回されたことにイラっとする。
さぼりではないか。


「学校、行けたんじゃないの?」

「・・・」


 取り敢えず、お金は渡したけれど困ったものだ。
最近、順調に登校出来ていたことでさぼりのように思えてならない。

 
 ドロップアウトは誰もが人生で一度は経験することで、それが我が子は今なのかもしれないけれど。
この状況を長引かせる訳にはいかない。
スマホやゲームの普及、親の多忙や経済的事情、学校教育のカリキュラムの変化など、社会は思うより物凄いスピードで千変万化し、それに付いて行けない子どもは、学校と言う名の小さな社会からこぼれ落ちる。落ちることは容易で、だが元に戻ることは非常に困難。

 ふと、夫も今現在ドロップアウトに片足突っ込んでいるのではないかと不安になる。
経済的に余裕のある家庭に生まれ、スポーツも勉強も卒なくこなし、有名大学を出て誰もが知る金融関連の企業に就職し、順風満帆な人生を歩んでいた。
だが、自分の能力を過信し過ぎた結果が「今」だ。
それが子に影響を及ぼし、行き渋りの原因になっているのではないか。
高校にもなると、いくら同じ屋根の下で暮らしている我が子でも本当のところのメンタルは分からなくて、それは親の直感に頼るしかないのだけれど、デリケートな問題だからこそ匙加減が難しい。


ーやることやっておきなさいよ。もうすぐ模試でしょう。

 そう声を掛けようと思ったら、先に、

「夕飯、作るよ。」

 子が私の何とも言えない表情に思うところがあったのか、思い掛けないことを言った。

「え?」

「仕事で遅いでしょ。今日は塾も無いし、カレーで良ければ作っておく。」

「あ・・そう。ありがとう。じゃあお願いしようかな。」


 勉強しろなんて言えなくなってしまった。
それに、親が仕事で疲れていることを慮ってくれるその心があるのなら、まだ大丈夫かなーと少し前向きな気持ちになれた。




 




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