新しいパートでも、事務パートの件が頭をぐるぐる回り集中出来ずにいた。
夫はブラジル戦のあった夜、職場に泊まるといって帰らなかった。
本当に職場か?と一瞬の疑いが過ったけれど、自分のことでいっぱいいっぱいでどうでもよくなり、了解の返信を送りそのまま放置。
逆の立場なら許されないことだけれど、夫は我が家の王様だから何をしたって許されるのだ。
翌日のパート先では、バイトの田中君は大遅刻をして来た。
皆に、サッカー観てたんだろう?と突っ込まれ、ヘラヘラしていた。
さすがに社員は皆きっちり朝から出勤していたけれど、バイトだし古株だから怒られない。
今年、4年生のようだが就活をしている雰囲気もなさそう。ここでこんなに甘やかされて、いざ社会に出てやっていけるのだろうか?と余計なお節介ながら思う。
実は、妙な賭けを自分の中でしていた。
ブラジル戦に日本が勝ったらここを辞めて事務パート一本に絞ろうと。
なぜこんなにも悩むのかと言えば、単にシフトを増やすだけではなく、部ではない課の異動があるからだ。
これまでは、米田さん含む木佐貫さんや花山さんや黒田さんと共に、部の中にあるA課とB課でメインのA課に所属していたのだけれど、私が提示されたのはB課にうつるということだった。
直属の上司というか、仕事を振ってくる相手が変わる。
米田さんではないもう一人の女性課長になるのだ。
直接かかわったことは殆どないけれど、独身の同世代だろうか・・米田さんよりだいぶ年上に見えるけれど、彼女より更に気が強そうで近寄りがたい雰囲気。
部内では一匹狼然としているけれど、外で同期らしき女性達とランチに行くところを見掛けたことが何度もある。
メインのA課は課員も多いけれどB課は少ない。A課の業務とB課の業務は連携が必要なものもあり、パートの私にはよく分からないけれど、米田さんがB課の課長から仕事を直接振られていることも多々あった。木佐貫さんもだ。違う課といっても同じ部署なので、業務が重なる部分もあるのだろうけれど、体制が新部長に変わったあたりからその曖昧だった線引きもきっちりしようという流れが出来てきて、だが長年培ってきたやり方を変えるのは並大抵のことではないらしく、米田さんもA課の課長にしょっちゅう愚痴を漏らしていた。前の部長が良かったと・・
B課が本来するはずの業務をA課に投げて、その業務を細分化して米田さんや木佐貫さんがパートの私達に振っていたのだろうけれど、もし私がB課に異動することになれば、B課の課長が私に直接仕事を振ることになるのだろう。
このまま今のポジションでダブル―ワークを続けるか。
だがキューピーのアタリはきついし仕事内容もきつい。
タッキーさんが退職すれば、更にしんどいことになるだろう。それに、やっぱり馴染めない。
事務パートの方は、一か八か、私のポンコツさはきっと既に知れ渡っているだろうし、それを加味しても提示された話。受ける価値はあるかも・・私が断れば、募集を掛けると言っていた。要するに、私はここでまた週1程度の午前出勤パートのままということ。いてもいなくてもどうでもいい存在。いや、むしろいなくてもいい存在に成り下がるかもしれない。
天秤にかけながら上の空で仕事をしていたら、やらねばならない教材のセット組を半分しか作ることが出来ず、上司にやれやれといった表情をされた。
「丁寧にやるのもいいんですがね、もう少しスピードあげられませんか?」
「申し訳ありません!」
どうしよう。
辞めようかな。
メリットデメリット、二つのパート先を天秤に掛ける。
ゆらゆらと、なぜだかそれは均衡を保つ。
天秤
仕事