試用期間中の欠勤

聴診器 生活
スポンサーリンク



 
 薬が効いたのか、ようやく七転八倒の痛みからは逃れたけれど、まだ体は違和感。
入社してまだ一か月も経たないというのに、欠勤してしまい罪悪感に駆られている。

月曜の夕飯、夫が取引先から貰って来たという鳥刺しをいただいた。
とても美味しく感動したのも束の間、それから数時間後の真夜中3時頃、腹痛の違和感で目が覚めた。

出社するか休むかのせめぎ合い

 汗もダラダラ、トイレへ行くも胃痛が酷くてたまらず辛い。
布団にうずくまり、ただ痛みの波が過ぎるのを待つが、なかなか治まらない。
意識を失う程の胃痛、痙攣のような収縮、そんな中でも出社しなくてはーと、祈るような思いであと3時間ーどうか治まれと願う。
まだ試用期間なのだ。
それに、今週は議事録の仕事もある。
小川さんからもアドバイスを貰い、ようやく前向きに頑張ろうと最善の準備をしてその時を迎えるはずだったのに。
痛みに耐えながら、市販の胃薬を口に入れたけれど、まったく効かない。
眠ればこの痛みから逃れられるーと、まるで陣痛の時を思い出すように、少しの「間」に意識を失い朦朧とする。
そうすると、眠りが浅いからなのか夢を見る。
すっかり治って出社しているのだ。良かった、なんとか仕事に来れたーと安堵しているのだ。
だが、再び痛みに起こされると、現実に失望する。
あぁ、やっぱりまだ治まらない。どうしよう、仕事を休まなくてはならないのか?
いつもはあんなに休みたい気持ちなのに、いざ休まざるを得ない状況が来れば、それはどうしても避けたく思う。
欠勤連絡をするのも怖いし、また、欠勤後の出社も怖い。
居場所が無くなりそうでー


欠勤連絡

「ママ?まだ寝てるの?朝ごはんは?」

「おい、どうしたんだよ、具合悪いのか?」


 布団にうずくまったまま動けないでいる私に見かねて、夫と子が声を掛けて来た。
見て分かるだろう、体調が悪いに決まってる。
そんなことも分からないのかーと同じ屋根の下で十何年も暮らす家族に対して苦しみながら苛立ちが募る。


「もう、7時になるぞ。しょうがないな、おい花子、パンがあっただろう?焼いて。」

「えー。お弁当はどうしよう。」

「今日はコンビニでいいんじゃないのか?・・・・・・・」

「・・・・・・・・」


 2人の会話が遠くなる。
また、胃痛。
あと30分がタイムリミット。
それまでに治らなければ、そこから急いで支度をしたとしても間に合わない。
苦しみながら、スマホの時計を見ながら、七転八倒。


「仕事、休むのか?」

「もう出るね、行って来ます。」

「俺ももう行くから。」


 結局、タイムリミットが来てしまい、職場に電話を入れることになった。
とても憂鬱で、自分が情けなく悔しかった。
なぜなら、今回は心ではなく体が原因での欠勤だったから。自分の意思ではどうしようもない選択だったから。


「おはようございます、芝生です。体調不良でお休みをいただきたいのですが、リーダー出勤されてますか?」

「あ、まだですね。はい、伝えておきます。」


 電話に出たのは同じ課の男性社員。名前だけは覚えたけれど顔が思い出せない。
まだ時間的に、夜勤明けの社員しか社内にはいないようだった。
直接リーダーに伝えられなかったが、これでいいのか?言伝で欠勤連絡なんて非常識だろうかー不安が過りつつ、しかしそれ以上の痛みでどうでも良くなる。



処方薬は魔法の薬

 この胃痛を真夜中に受けた時、真っ先に鳥刺しが原因だと思ったけれど、2人は平気そうだ。
では一体この症状は何だろう。
とにかく、家にある薬では無理。病院でちゃんとした薬を貰わないといよいよ悪くなる一方。
症状は、寝ていれば良くなるどころか悪くなる一方なのだ。
だが、こんな状態で自転車漕いで病院なんてー
それでも医者に診て貰わなければ、この痛みから解放されない。
すっぴんに何とか服だけは着替え、一番近い消化器系クリニックへ。
運が良いことに待合室は空いており、すぐに診察をして貰えた。

「鳥刺しを昨夜召し上がったんですね。ちょっと診てみましょう。」

 診察ベッドに仰向けになると、医師は腹のあちこちを強弱をつけながら抑える。
その度、悲鳴を上げそうになるが、ぐっと堪える。

「痛いですよね、はい、もういいですよ。」

 食中毒が原因なのか、はっきりしなかったけれど、良く効く薬を処方してくれた。
「タケキャブ」「チキジウム」という薬。この2つで様子を見てくれと言われた。


明日が憂鬱

 薬は抜群に効いた。
すぐに服用し、ものの1時間でその効果は表れた。
つまり、眠れた。ぐっすりと。
だがまだ違和感は残っている。
実は、昨日の夕方に小川さんから電話があり、明日も辛かったら連絡せずに休んでOKと言われたのだ。
こんな職場、かつてあっただろうか。
本当は、今朝はいくらか楽になっていたので出社しようかと思っていたのだが、まだ万全ではなくしかも微熱があったので休むことにした。
もし、電話連絡をしなくてはならないのなら、気が重いのでそのまま頑張って出社しようと思ったのだが。
体調が万全ではない状態で出社しても迷惑だなーと思い直した。

 体重が2キロ減った。
何とか水分を取り、今朝は震災ストック用のゼリーを口にした。
胃痛は無くなったけれど、腹はまだゴロゴロ不穏な動きを見せている。
何とか今日一日で完治させなければ。



タイトルとURLをコピーしました