付き添い

フラペチーノ 家族
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 病院の付き添いをした。
久しぶりに会う義父は、会話が以前より更に一方通行になったようで心もとない。
義母が脳梗塞で倒れてからずっと、気が張っていたこともあるのだろう。
以前は、私の父よりもずっと頭の回転も速く、また体力もあったのに。

義実家へ行くと、義父は既に身支度を整えており、三女は在宅仕事で部屋にこもり挨拶もなかったが、義母からは、

「助かります、ありがとう。」

 お礼を言われ、しかもタクシー代といって1万円もいただいてしまった。
病院の往復でも、十分お釣りが出る金額。
実家よりも羽振りが良い義実家だけれど、だが実際のところどうなのだろう。
義姉らが最近、実家を頼ったら駄目だと遠回しに私の耳に入れて来ることもあり、手放しに喜べないのだった。


 診察室に共に入り、医師の説明を受ける。
だが、話の途中で割って自分が聞きたいことを一方的に質問し始める義父。
実の父なら気にせず止められるけれど、義理ということもあって遠慮してしまう。
医師は、段々と面倒臭そうにその質問に答え始め、だが空気を読めない義父はお構いなし。
話を最後まで聞けないのだ。


「ちょっと、いいですか。落ち着いて下さい。」

 とうとう、医師も痺れを切らしたのか、強い口調で返した。
今度はへそを曲げたのだろうか?だんまり。ちゃんと聞いているのだろうか?


「・・ということですね。これまでで、何かありますか?」


「ふん!何かって?さっぱり分らんよ。」


「ご家族の方は?」


 医師は義父のその幼稚な態度に憤慨しつつ、だがすぐに冷静な表情に戻ると、助けを求めるかのように私に向き直る。


「大丈夫です。」


 大丈夫と言い切れなかったが、質問が浮かばなかった。


「では、手術の日程ですが・・来月の・・」


「夏の暑い時にやりたくないですよ。涼しくなってからがいい。」


 我儘ばかりの義父に戸惑う。こんな人だっけ?
義母が倒れて、しばらく手伝いに行っていた頃はもっと紳士的でこんなに横柄ではなかった。
だが、遥か昔、まだ子が小さい頃の義父はこんな感じだったかも。まだ仕事をしていてエネルギッシュだった頃・・


「こっちは予定が色々あるんですよ。」


 医師は唖然としていた。
予定があるもなにも、患者は病院のスケジュールに合わせるべきなのではないか。


「お義父さん・・お義姉さんからこの週の辺りはどうかって・・」


 こんなことも想定していたのだろうか、先日、次女から何となくのスケジュールを聞いていたのだ。
義姉らも、自分の父親の我儘っぷりに振り回されているのかもしれない。

次女の名前を出すと、途端に大人しくなった。
ようやく手術の日程も決定し、私の役目は終わった。

 帰りはどこにも寄らず、そのままタクシーで帰宅。
玄関先に迎えに来た義母にあがるよう言われたが、どっと疲れてお邪魔する気が失せたのと同時に、あがれば仕事終わりの三女と顔を合わせなくてはならない面倒臭さでやんわり断った。

「これ、お釣りです。」


「いいの、いいの。今日はご苦労様。美味しいものでも買ってね。」


 少し前までの義母と違い、なんだか溌剌としている。
勿論、体はまだテキパキ動くことは出来ないけれど、倒れた当初の呂律が回らない状態が今では思い出せないくらい。


 義実家を後にし、スタバに寄ってしまった。
スタバなんて何年ぶりか、子はよく買っているけれど。
フラペチーノに700円、この物価高で日々節約とあくせくし、暑い中肉体労働もしている私が分不相応だと思うけれど。
とにかく疲れて、1杯の高級ドリンクに癒される。

さて、明日からまた頑張ろうーそう思えた。


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