体育祭の後のカルボナーラ

カルボナーラ
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 子の体育祭に行って来た。
PTAなので、カメラ持参。去年の体育祭では、子の学校での様子が見れて役員をやって良かったと思えたけれど、今年は正直微妙だ。
去年は、体育祭仕様にヘアメイクをがっつりしていた子。ド派手過ぎると思ったけれど、実際、皆もお祭り騒ぎで子の恰好は馴染んでいた。
だが今年は、メイクこそいつものようにしていたけれど髪型はそのまま。
それに、クラスTシャツを着てもいない。


「Tシャツ、着ないの?」

「学校で着替えるから。」

「後で学校行くからね!」

「え、来なくていいって。」

「違うよ、PTAだから。」

「あぁ・・そう。」


 覇気のない返事をし、出て行った。



 学校に着くとすぐに、PTA役員それぞれの持ち場へ集合する。
予めラインで役割は決められていたので、私はカメラを持ち同じ係の人を探す。
ペアだったので、互いにすんなり打ち解けることが出来た。同じ2年の保護者だ。


「やっぱり高校ともなると迫力ありますよね。」

「みんな、楽しそうでいいですよね。」


 会話をしつつ、カメラ越しに我が子のクラスのテント辺りに目を遣る。
だが、子らしき人物は見えない。


「うちの子、今年、応援団なんですよ~毎日ダンスの練習してて、夜も公園でね。」


「じゃあ、今日はしっかり写真撮らないとですね。」


 去年は楽しそうに友達と戯れていた子。
同じく、その保護者の子どもは青春時代を満喫しているようで、なんだか胸の奥にザラリとした感触をおぼえる。
自分の子どもを見付けられないまま、他所の子どもを撮影するジレンマ。
上の空でシャッターを切るから、ブレたり焦点が合わなかったり、きっと殆どがボツになるだろう写真を撮り続ける。
子のクラスのテント下では、男女仲良く楽しそうに自分のチームを応援している様子が見える。
私も目にしたクラスTシャツ。背中の文字入れ、最後まで子が何を入れたのか分からないまま。
もしかしたら、何も入れなかったのかも。

結局、最後まで我が子の姿を見ることなく終わった。
悶々としつつ帰宅すると、子は既に自宅にいた。
一緒に撮影をしていた応援団だった子がいる保護者からは、


「今日は打ち上げですって。帰りは夜になりますね~」


 と聞いていたので、親より先に家にいる我が子を不憫に思う。
何となく、今日の体育祭の感想を聞くのが躊躇われ、疲れているけれど子の好物のカルボナーラを作る。
風呂場から出て、子はすぐさま、

「何これ?いい匂い。」

「カルボナーラ、食べる?」

「うん!食べる!」


 良かった、食欲はある。
ほっとしつつ、山盛りのカルボナーラを出す。
ちょっと失敗して卵がダマになってしまったけれど、


「うま!うま~!おかわりってある?」


 子が本当に美味しそうな顔をして平らげたものだから、ちょっとだけ安心する。
食欲があることは救いだ。

結局、体育祭で子が出た種目も分からなければ、どこにいたのかも最後まで分からなかったけれど。
それでもいい、こうして家に帰って来て私のご飯を美味しそうに食べてくれる。
それで十分、ここは子の羽を休める場所としての機能を果たしている。



 

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