退職の決意

フルーツ 仕事
スポンサーリンク



 

 気の重い朝礼でのスピーチ。今朝は、中山さんだった。
私に向ける、あの冷酷な表情とは打って変わって、リーダーの前ではおべんちゃらも言う彼。
へらへら笑いを取りつつ最近の時事ネタを絡め、自分の目標と職場の士気の上がるような話をしていたようだが、まったく私の耳には届かなかった。
そしていまだ私にスピーチは回って来ない。
やはり、パートだからなのか?
あるなし分からないままで3カ月経ち、毎朝、無駄に緊張するこの時間が勿体無い。


「今日って、手が空いてます?」


「すみません、ちょっと中山さんに頼まれている仕事が終わってなくて。」


「あー、そうなんですね。なら大丈夫です。」


 中山さんから頼まれている仕事があり、その負荷が大きいので小川さんの仕事を引き受けることが出来なかった。
実は、小川さんにも聞いてみたのだ。
作業手順がごちゃごちゃしており、フローチャートが読み取れず、いったい何をどうしたら良いのか分からないので手順書を見せたのだけれど。


「あー、それは、ちょっと中山さんに聞いた方がいいかと思います。彼、ちょっとこの間怒ってたから。」


 彼から頼まれていた作業で、私が頭を抱えていた先日のこと。
小川さんが声を掛けてくれたので、ついやり方を聞いてしまった。
親切な彼女は、的確なアドバイスをくれたのだけれど、それが気に入らなかったらしい。
基本、放置の癖にー、筋が違うと怒り心頭だったとのことだ。
普通、作業を振った人間に聞くことだろうと。
迷った挙句、タイミングを見計らって謝りに行った。

「すみません。先日は作業手順について、直接聞かず申し訳ありませんでした。」

「あー、今度からは気を付けて下さいね。こっちの仕事と小川さんがやってる仕事は全然違うので。彼女も自分の仕事をする時間を削ってっていうのは、ちょっと違うと思うんで。あと、作業が途中ならその進捗もちゃんと僕に伝えてから帰って下さい。昨日も、どこまでやってくれたんだか分からなかったので困りました。」

「あ、昨日は殆ど作業が進まなくて。」

「それも含めて、お願いします。日報も書いているかと思いますが、僕は見れないんで。」

「はい、申し訳ありません・・」


 そんなやり取りがあり、ますます彼に近寄りがたくなってしまった。

それにしても、これはパートの仕事なのだろうか。
事務兼雑用ーと聞いていた仕事なのに、実際は専門的な仕事の手伝いで、彼らからしたら雑用なのかもしれないけれど、知識ゼロスタートの未経験者にはハードルが高いと思う。
私の能力不足もあるけれど、IT用語があちこち散乱した資料を読み込み、理解出来ない箇所はネットでまず調べてそれでも分からなければ社員に質問。
もっと簡単な作業、データ入力だとかコピー取りだとかファイリングだとか発送物の準備だとか、そんな仕事だと思っていた私が甘かったのだろうけれど。
やっぱり、向いてない。
プライベートと切り離せない日々。


「明日はリーダーと面談ですよ。」


 小川さんに帰り際、声を掛けられた。
試用期間終了前の面談。
そこで退職の意を伝えたい。もう決めた。






タイトルとURLをコピーしました