鬼メンタル

鬼 仕事
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 花山さんが久しぶりに出勤した。
もうこのまま辞めるのでは?と思っていたのは私だけのようで、米田さんも木佐貫さんも彼女をいつも通り受け入れていたし、新人の黒川さんへの距離の詰め方も流石としか言いようがなかった。

「あー、すっかり忘れちゃった。これ、どうするんだっけ?」

 業務内容を隣の席の私に聞く。
そんな大きな声でーとこちらの方が焦る。ただ、彼女の質問にすぐに答えられず、オタオタと資料を探しデスクトップ上に保存してある自分用のメモを探し、それから順序立てて説明している途中で、

「あ~、そうそう、そうだった。思い出した、ありがとう~」

 別に私の説明なんて不要だったのでは?と思うくらいにすんなりと仕事に取り掛かり始めていた。
米田さんも、なんだかほっとしたような表情で早速彼女に仕事を振っていた。


ランチタイムになり、皆で外へ。
花山さんが出勤するとは知らなかった私は、鞄の中にあるおにぎり二つをどうしようか・・と悩みつつ流れで付いて行った。


「で、もう今月は出られるの?」

「休み中、何してたの?こっちは大変だったんだけど。」

「繁忙期にがっつり休まれると思ってなかったから。」


 特に、木佐貫さんは嫌味のような物言いで、相当彼女に苛ついていたことが分かるのだけれど、花山さんのすごいところは「まったく気にしない」というところ。


「ランチ行ったり、温泉にも行って来ましたー。そうそう、これお土産。」


 温泉土産を平気で皆に配るのだった。
そして、

「そうそう、美味しいワインバー友達がやってるんですけど。忘年会しません?」


 ワイン好きだという米田さんにその店のHPを見せ、


「飲み放題でこの金額なんですよ。お得じゃないですか?チーズもほら、こんなに種類があるんです~」


 ランチ前のピリピリした空気はいつの間に彼女のペースに飲まれ、木佐貫さんですら怒りを忘れて彼女から貰った土産を見て、


「これ大好き!」


 なんて言うものだから、もうこれは天性というヤツだ。


「ネイル、可愛いねー。どこでやってるの?」


 黒川さんにも積極的に話し掛け、爪のデザインについて和気藹々としている。


「花山さんの爪、とっても可愛いですね。クリスマスって感じですごい素敵。」


 そんな彼女のネイルは、クリスマスカラーで可愛い小さな雪の結晶やリースのようなパーツがデコってありキラキラ輝いていた。
人たらしーという言葉が脳裏に浮かんだ。


 ランチを終え、午後の業務。
木佐貫さんにいたってはお子さんの個人面談があるからとランチを済ませた後はそのまま退社。花山さんに業務をしっかり引き継いだようだった。

やっぱり、私では役不足だったのだ。
なんだか居たたまれない思いの中、自分の仕事に集中しようとするけれど、どうしてもこの間まで空席だった隣にいる彼女が気になり上の空になってしまう。


「終わりました、何かやることありますか?」

 黒川さんが米田さんに聞くと、

「あ、じゃあ花山さんに聞いてみて。」


 そこからは、花山さんと黒川さんが少し面倒な集計作業のようなものを始め、私はやることがなくなり、花山さん達の手伝いをした方が良いと思い声を掛けるが、


「2人で大丈夫~。」


 そっけなく返されてしまった。
花山さん云々よりも、自分の心配をした方が良さそうだ。




 

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