ニュアンスの違い

葉っぱ 仕事
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 今日も職場は憂鬱な場だった。
米田さんは、相変わらず私をスルーし、だがどうしても何か頼まざるを得ない時は木佐貫さん経由。
そして、木佐貫さんも米田さんに倣い、私への対応が塩になりつつある。
朝、挨拶をすると、明らかに体調が悪そうな彼女。声はガラガラ、マスクをしている。


「木佐貫さん、お子さんの風邪がうつったみたいよ。」


 花山さんが耳打ちしてくれた。
なるべくなら接触したくないのが本音だけれど、まずは先日の休みに指摘されたミスの謝罪を木佐貫さんのところへ行きした。すると、物凄く小さなリアクション。

「大丈夫です・・」

 マスクをしていることもあり、ただでさえガラガラ声がくぐもっており聞き取り辛い。
機嫌もかなり悪そうだ。
続いて、部長絡みの仕事だったので、直接デスクへ行き謝罪した。

「あー、大丈夫、そんな気にしないで。今度から気を付けてくれれば。」

 優しかった。
ほっとしてデスクに戻ると、木佐貫さんがすぐに私の元に来て、


「いちいち部長に謝りに行くことじゃありませんから!私の方で治めておいたんですから!」

 激しく怒られた。
私の頭の中は、「?」で一杯になり、木佐貫さんのことがいよいよ分からなくなった。
私もよくないのだが、怒られている最中に先日指摘されたメール送付のccの件が頭に浮かんだ。彼女から外部や他営業部にメールの際はccに入れるよう言われたことについて。
何気なくその点について伝えたら、彼女の導火線に火が付いた。


「えっと、ccに入れる入れない以前に、ファイルが添付されていなかったんですよ!?ただメール送信するだけじゃ営業部もなんだこれ?ですよ。空メールが送られて来たくらいにおかしいことですから!」


 メール送信されていないとラインで聞いていたから、朝一で送信履歴を辿ったのだ。更に、㏄の確認も。しっかり木佐貫さんはccに入っていた。なので、ファイルが添付していなかったとしても彼女が確認してくれていたら未然に営業部がバタつくのも防げたかもしれないのに。


「え?私、何かおかしいこと言ってます!?」


 私の腑に落ちない表情に苛立ったのか、更に声を荒げる彼女に委縮する。

「いえ・・申し訳ありませんでした。」


 退社後、もう一度、先日彼女が送って来たラインを確認した。
彼女サイドに立ち、冷静にもう一度文面を読めばccがどうのこうのより処理がされていないということを私に伝えているようだ。だがこれを受け取った時の私は、メールが送信されていないと受け取った。私と彼女の中で、相違があったということ。
 花山さんも黒川さんも、社員の彼女らとうまくやっている。
それは、仕事が完璧だからだ。
性格がどうであろうと、きちんと仕事さえしていれば表向きは文句を言われることはない。
情けない。こんな母親の姿を娘が見たらどう思うだろう。
お金を稼ぐって、楽じゃない。

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