Dream&To Do

虹のトンネル わたし
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夢を引き摺るアラフィフ主婦


 2校の大学を受験することについて、父は難色を示した。
本当に受かるのか、落ちたらどうするのか?
そもそも、なぜその大学を受けたいのか?
うちにはそんな金はない。
いったん社会に出て自分で稼いで大学資金を溜めてから大学生になればいい。
アメリカ人は皆そうだ。
自分で稼いで自分の金で大学に行く、それが当たり前だ。
東大、早稲田、慶応くらいの大学レベルなら、親が金を出しても出世払いになるけれど、それ以下は無駄。

先を考えると不安しかないし、むしろ合格は夢のまた夢。
夢が破れた後の受け入れ先もない。


 ぱっと目覚めると、見慣れた寝室。
そうだー、私は今、インフルに感染してしまった父子を看病している主婦だった。
時計の針は、8時を指している。
子に薬を飲ませる為、お粥かうどんを作らなくては。

冷凍ご飯をチンし、ざるにあけて水でぬめりを取った後、鍋に入れ水をひたひたになるまで注ぐ。
弱火でコトコトそれを炊いている間、物思いにふける。

パートを辞める、その前提での休職期間。
そう思う一方で、それでいいのかと自問自答する。
私が喉から手が出るくらい欲しかった「学歴」。
大卒の夢は叶わなかったけれど、その大きなコンプレックスを解消するべく今回の仕事をつかみ取ったというのに。
ハンガーに掛けられた、仕事用ブラウスとカーディガン。
これに袖を通すことが辛くなっている日々。
これを手放したらどんなに楽になるかと思う。
それなのに、私の潜在意識はこうして夢としてあらわれるのだ。

 子ども部屋を覗くと、子は既に目覚めていたようでスマホをいじっていた。
夫の部屋のドアを開けると、うめき声。
声を掛けると、ガラガラで何を言っているのか分からない。
ただ頭が痛いと繰り返す。
昨日に処方されたゾフルーザが効いていないのだろうか。
子は、タミフル処方だったので5日間掛けて服用しなくてはならないが、夫の場合、あとはただただ寝て治まるのを待つしかない。
取り敢えず、夫もゼリーか何かを口に入れさせカロナールでも飲ませるか。


 来週も、パートは休む。
本当は、今後のことも含めて人事に相談がてら出社する予定だったのだけれど。
家族がインフルなのだから、これから私も発症する可能性がある。
猶予がまた一週間延びた。



子どもの病気に伴う名もなきTo Do

 子がインフルで救急車に運ばれた。
インフル感染だけだったのなら、発症後5日間、解熱後2日を過ぎれば登校の流れ。
だが、今回は週明けに再度診察の予約が入っている。
念の為、予後の経過を診たいと医師に告げられた。
それに伴い、子の学校に欠席連絡の他、塾や歯医者や美容院のキャンセル、その後の振替日調整等しなくてはならない。
このスケジュール管理が厄介で、JK女子高生の時間割や放課後の予定を把握出来てない親にとって、子にいちいち聞きながら手帳を取り出し、他の予定とダブルブッキングしないよう組まなくてはならないのだから骨が折れる。
そして、複数の芸能人を担当する敏腕マネージャーは、いったいどんな脳内構造なのかと感心してしまうのだ。
子ども一人だけなのだから、子だくさんの親からしたら朝飯前の作業でも、娘一人しか育てた経験の無い私にとっては既にキャパオーバー。
早く、通常運転に戻りたい。




束の間の自分時間

 家族が体調不良に陥ると、むしろ、そんな時の為の「母親」「妻」という肩書なのだが、やはり疲労感はいつもの比ではない。
子が救急車で運ばれた時は、仕事のことなど頭からすっ飛んでいた。
優先順位からしたら、当たり前だけれど、我が子>自分のことーなのだ。

今は、私がこの家の大黒柱。倒れている場合ではない。
なので、いつもより食事もがっつり食べる。
自分一人分なので、夫も寝ていることだしーとスーパーでトンカツ弁当を買って食べたり。
栄養バランスもしっかりと、サラダを山盛り作って食べる。勿論、甘い物も。

精神的にも健康を保つ為、夫や子の世話の合間、ちょこちょこと休憩時間を取る。
珈琲を淹れ、パートの時は溜まる一方だったドラマを観るのが楽しい。
束の間の自分時間は、ドラマという現実逃避の世界にワープする。
お金も掛からない、一時停止すれば現実の世界に戻れる、詰まらなければ早送り。
誰かが考えた素敵な脚本の人生を、私はいっときだけ味わうことが出来るのだ。



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わたし
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