冴えない主婦の投資デビュー

株チャート 生活
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 事務所の手伝いへ。
気が重いながらも、彼女は来月には実家に戻るというのでそうもいっていられない。
期間限定のことなのだーと自分を励まし、夫の運転する車で事務所へ向かった。


朝の雑談タイム

 私と2人きりだと沈黙が続く彼女なのに、夫や犬塚さんがいるとガラリと雰囲気が変わる。
冗談も言うし、表情豊かなのだ。
私が原因なのだなと今更ながら思う。
思えば、ママ関係でも義実家でも、また家庭の中でも、私は誰かとキャピキャピするタイプではない。
いつだって聞き役だし、相手が8割話して私は2割口を開けば良い方なのだ。


「今日、一日で30万跳ねたんだけど!」


「仕事どころじゃないな。」


「こないだはだいぶマイナスで泣いてたよね。」


「あはは。そうだっけ。忘れた!でもさ、年間でトータル500近いんだけど。すごくない!?投信解約して全部こっちに突っ込んで正解だったわ。」


「ほらほら、見て。」



 彼女がPC画面を夫と犬塚さんに見せた。2人とも、「すげえ!」と笑っている。
私はその前にいながら、それを覗き込むことが出来ない。
なんとかテクノロジーだとか、横文字のよく分からないAI銘柄について盛り上がる彼らの話にまったく付いて行くことが出来なかった。
吉田さんはいずれ不動産投資もしたいと言う。
シングルなのに奨学金を借りることもなく息子を大学に行かせた彼女。私が憧れとする自立した女性なのだ。

 何となく夫を見たら、目がバッチリ合った。
それから笑いを含んだ声で、


「あなたもちょっと勉強してさ、こうやって稼ぐことだって出来るんだから。これからますます厳しい時代になってくんだし、自分の身は自分で守らないと。先を考えて行動していかないと。」

「いやいや、奥さんは健全ですよね。株なんてリスクありきだし。カズ君も良くないよ、こうやって好きなこと出来てるのも奥さんのお陰でしょう?」


 かぁっと顔が熱くなる。
上から目線で馬鹿にされたのもそうだし、彼女が夫を甘ったるい声で「カズ君」と呼ぶことに憎悪した。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪いー


夫は私のことを「あなた」と呼ぶ。
私は夫のことを「ねぇ」と呼ぶ。
赤の他人が夫のことを「カズ君」と呼ぶ。

傍からみたらどう思うだろう?
子が聞いたらどう思うだろう?
あー、子は、私達が互いを「パパ」「ママ」と呼び合うと思っているのか。
じゃあ、私だけの問題か。







投資関連の本を大人買い

 この日の帰り道、頭に血が上った私は投資関連の本を大人買いした。
思えば、無料で見られる動画でも良かったのかも。
でも、夫に対する怒りでもあった。
折角、勉強したら?と提案してくれたのだ。
それに応えてやろうじゃないかと。
堂々と雑費として計上してやろうと。
購入したのは、

「ジェイソン流お金の増やし方」
「貯金感覚でできる3000円投資生活」
「バカでも稼げる米国株高配当投資」の計3冊。

夫が表紙を見たら馬鹿にして笑うだろうけれど、どう思われても構わない。
そもそも最初から私を下に見てるのだから、これ以上下がることもないだろうし。




冴えない主婦が株で一発逆転のチャンス

 私がパートを始めたら、再び夫は子ども費をそこから出せと言いそうだけれど。
投資を始めることで、現金から資産に変えられるという逃げ道がある。
夫が勧めたのだから、結果さえ出せばNOと言わないだろう。
頭の中は、今は投資のことで一杯。
暇さえあれば、ネットでも株動画を観てしまう。
お勧めされている両学長の動画は、知識のない私にも分かりやすいし、ますます投資欲が湧いてくる。

夢は広がる。
パート代が何倍にもなれば、夫と離婚出来るかもしれない。
キャリアをアラフィフになった今現在に立て直すのには無理があるが、一発逆転勝負ーそのチャンスかも。

私が常に願って、でも叶いそうもない諦めかけていた夢。自立。
堅実に行こうと思っても、なかなかうまくいかない現実。
ならばー
とにかく手あたり次第やってみる、それが大事だ。
この本たちを熟読して備えたい。


 まずは、資金調達の為にパート。
面接結果、どうか採用されますように!






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