お隣の目論見

ぶどう 生活
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 来週末、自治会主催の夏祭りがある。
掲示板にも張り出され、そして回覧板にも、「お手伝い募集中!」の呼びかけ。
取り敢えず、参加に丸を付けることはせずシャチハタ印だけ押してお隣のドアに回覧板を掛けようとした時、

ガチャリー

 ドアが開いた。
ものすごく驚いて、声が出てしまった。
針金さんと久しぶりに真正面から目が合った。


「こ・・こんにちは。」


「こんにちは!」


 ビクビクしている私とは反対に、針金さんはとびきりの笑顔。
まるで何事もなかったかのように。
怖い。


「これね、今年は全然人が集まらなくって。来週、芝生さんは何か予定ある?」


「えっと、ちょっとまだ分からなくて。夫の実家に行かないとかもなので。」


 適当な嘘をつく。
それでも彼女は食い下がらない。


「もし都合付いたら、お手伝いお願いします。ほんと、ちょっとの時間でもいいの。1時間でも入ってくれたら助かるの。」


 今年は、綿菓子とフランクフルトを売るらしく、この暑さで例年お手伝いをしてくれていた老人らに頼む訳にもいかず、若手で何とかしようとなったらしい。


「あ、そうそう。ちょっと待って。」


 少し待たされた後、再び玄関にあらわれた針金さんからお裾分けを貰う。
美味しそうなぶどうだった。


「友達が送ってくれたんだけど、食べきれなくて。良かったら。」


 断る訳にもいかず、曖昧な笑顔で受け取る。
受け取ったからには、手伝いに行かなければと妙な責務にとらわれる。


「じゃあ、予定がはっきりしたらラインでもしてね。」


 あの猫の件はまるで何もなかったかのように振舞う彼女にサイコパスをみる。
二面性?それとも私が気にし過ぎた?
良い人なのか、それとも物凄く怖い人なのか。
どちらにせよ、もうあまり深入りしたくない。





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隣の芝生
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