インボイス登録

電卓 家族
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 ここ数か月、インボイス対応に追われていたらしい夫。
そもそも吉田さんが担当だったらしいのだけれど、実家に戻ることになり更に延長。
いつ戻れるのかも定かではない。

犬塚さんとも相変わらずうまくいってないのだろう、泥酔して帰宅すると独り言とも言えない彼への罵倒を聞き流しているだけの私も妻として失格だ。
自分の仕事のことで頭がいっぱいで夫のことは考えないようにしていた。
何だかマズイことになっているーと頭の片隅にはいつでもあるのだけれど、これ以上夫の機嫌を損ねたくない気持ちと自分の情緒を守りたい気持ちが行動を制限してしまう。


「インボイスって何?」


 夫がニュースを観ながらインボイス対応の面倒さを愚痴っていた時、ふいに子が私に聞いて来た。
最近、テレビやネットでも「インボイス」という言葉を頻繁に目に耳にするので気になっていたらしい。
こういう時さっと答えられる母親になりたいのに、いざとなると狼狽えてしまう。


「えっと、これまで消費税を払わなくて良かった小さな会社がインボイス登録ってのをして課税事業者になることで支払いの義務が生じるようになったと言うか‥云々・・」



「え?どういうこと?」


「あー、えっと、ママもよく分かってないの。とにかく、フリーランスとか、小さな会社で売上も少ないところは大変だってこと。これまで免除されていた消費税を納めないとならなくなったから。」


「おいおい、子どもに嘘教えるなよ。教えるならちゃんと正確に伝えないと駄目だろう?」


 夫が突然首を突っ込み、そこからは子に説明を始めた。
悔しいけれど、そういう時の夫は頼もしい。そして私でも分かるように順序立てて説明をしてくれる。
子も、ちゃんと理解したようだ。


「あなた、新聞くらいちゃんと読みなさいよ。」


 呆れたような表情でそう言い、夫は自室へ入ってしまった。
いつもよりあっさりとした物言いだったのが拍子抜けで、夫は夫なりに誰にも言えない悩みを抱えているのが透けて見えた。

一つ屋根の下。
夫と私と娘。家族であっても、その心の内は100%分からない。
その悩みは大小あるけれど、分かち合えたらいいのにと思いながらもう16年経ってしまった。






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