義務教育が終わり、ようやく面倒なしがらみから逃れられたと思っていたけれど。
そんなことはなかった。
PTAがまだあるなんて・・・
高校入学説明会
卒業式を終え、感傷に浸る間もなくバタバタと落ち着かない日々。
入学に関するあれこれ、やることが多い。
まずは、入学説明会。
高校が指定する日に出向き、入学からその後の学校生活においての説明等を聞かなければならないのだ。例にもれず、私達も行って来た。
道を歩いていると、子が友達を見付けたようで手を振る。その子は別の友人親子といた。
「やほー!花子も13時からの会なんだね。」
「うん!でも教室は違うね、またね。」
受験番号順で教室が分かれており、その子とは別。
母親らと一瞬目が合い軽く会釈。
あちらも会釈を返してくれたのでほっとする。
このような、親子が少しでも絡むシチュエーションにはいつだって緊張感が伴う。
大量の配布物と提出書類
配布された大きな封筒に書類一式が入っており、その量の多さに軽いめまい。
ちゃんと書類が入っているか確認もままならないうちに説明が始まる。
隣に座る子から、
「ちょっと、ママ。ちゃんと聞いてる?」
「あぁ、ごめん。」
子からしても、こういう手続き等のことについては私より父親の方が頼りになるらしく、今回の説明会も夫にどうにか来て欲しそうだったけれど、仕事で無理だったので仕方なしに私が出席することになったのだった。
校長の挨拶から始まり、学年主任から授業や生活についての説明、学校事務から諸手続きや費用についての説明と目白押し。
聞いているだけで頭の中がごちゃごちゃし、メモを取るが整理出来ない。
私の脳みそに問題があるのか、パートの時もそうだったけれど、人の話を正確に聞き取り判断し整理することが、極端に不得手だ。
最後に、PTAから。
義務教育でようやく終わったかと思われたPTA。高校になっても引き続き加入が勧められる。
任意といっても、実際加入しない者などいるのだろうか?
加入しなければ、子が学校生活を送る上で不便を感じるかもー
更に、あの子の親はPTAに加入していないという「普通ではない家族」のレッテルを貼られるのでは?
そんな理由で、小学校も中学校も加入して来た。そして今回もやはり流れ的に加入することにしたのだけれど、配布された資料の中に入っていた「PTA調査票」。
あぁ、やはりここでもかーとため息。
会長が、それについての説明を始める。役員決めをスムーズにする為にも、調査票の提出をして欲しいというもの。本部役員からの専門委員。小学校から続く悪しき慣習PTA。
混乱していた脳みそがショートしそうだったので、調査票は自宅に帰ってからゆっくり目を通すことにした。
ジャージ等購入
説明会が終わると、別部屋で体育館履きや上履き、それに体操着やジャージ等のサイズ合わせと購入が始まった。
なんだかんだで入学するまでに金が飛ぶ。
夫が下調べをし、これくらいは要るだろうと渡された取り敢えずの10万円。
制服を購入したところで半分以上無くなり、ここでまた数万掛かる。それに、教科書やタブレットや電子辞書等・・10万円では足りない。その倍掛かる。
ジャージなど、子はぶかっと可愛く着たいと言う。
ただ、子の身長からしたらLサイズは大き過ぎではないだろうか?
女の子らが群がる家庭科室は、説明会の静けさとは異なり、ガヤガヤと賑やかな空気。
そして、既に入学前なのにうっすらメイクをしている子、髪を巻いている子もおり、中学の時とは違うのだなと実感させられた。
「花子!」
先程の友達に声を掛けられた子。子も嬉しそう。その子の隣にいる子と我が子は面識がないようだったけれど、何やら紹介タイムに入ってすぐに和気藹々と3人で試着し合っていた。
親御さんに挨拶しないとーと焦り、周囲を見渡すと、先程軽く会釈を交わした2人を見付けた。
ただ、子ども達とは少し離れた場で、楽しそうに会話をしているので挨拶のきっかけがつかめない。
ーふっと目が合い、今がチャンス!と思った時に、
「ママ、やっぱりMにする。」
子に話し掛けられ、いつの間に子も友達とおらず、私達親子だけになってしまった。
会計をし、
「さっきのお友達は?」
「あぁ、なんか用事があるからってもう帰っちゃったよ。」
タイミングが合わない親子
ちょっとくらい挨拶をしておけばーと悔やまれる。
ライン交換は無理だとしても、顔見知りになれば、今後の高校生活で分からないことなど聞ける関係性を築けたかもーと。
いやいや、もう高校なんだから、分からない問題は子ども自身が解決するだろう。
もう親の出る幕もない。
そんな風に、自問自答をしつつ帰り道を歩いていると、道路沿いのファミレス内にさっきの友達親子を発見した。子は、まったく気付いていないが、なんだかショックだった。
最後のママ友作り
なんで、ショックを受けたのだろう。
もう、中学校を卒業し、ようやくママ友関連から解放されたというのに。
それに、別に嫌な目に合ったわけでもない。
なのに、彼女らがファミレスで楽しそうにしているのを見た時、なぜか胸の奥がチクリと痛んだ。
きっと、どこかでまだ期待している私がいるからなのだろう。そう、最後のママ友作りに。
主人公は、子ども。
この学校という舞台での主役は子どもなのだ。頭をぶんぶんと振り、気持ちを切り替える。
「ママ、大丈夫?」
子が怪訝そうに私を見る。
「ねえ、喉乾いた。お茶して帰ろうよ。」
駅前の数多いカフェでは、私達親子と同じく制服姿の子どもとその親が軽くお茶をしている姿があり、私達もそうすることにした。
あんなに家族でファミレスを拒否していた子も、私と2人ならそこまで嫌ではないのだと思い嬉しかった。
ママ友がいなくても、こうして娘がいること。
女の子の母親の特権。
お茶出来る娘がいるだけで、有難い。そう気持ちを切り替えた。