事務パートで私が使用しているPCの調子が悪い。
隣の席の花山さんはサクサク事務処理をこなしている一方、私は操作をする度にカーソルが固まったり、ぐるぐるロードしていたりと使いづらい。
何が原因なのか、帰宅後ネットで調べても、IT専門用語で訳の分からない説明ばかりで解決出来そうもない。
「これ、お願いします。」
木佐貫さんに作業を振られ、それはただの入力業務なので簡単に終わるはずのものなのに、まずExcelが開かない。何度も何度もクリックしたら、今度は同じExcel画面が立て続けに5個も6個も出て来て固まる。
なので、ここは忍耐勝負とじっと待つのだけれど、そうすると時間が掛かる。
「終わったら、これもお願いします。」
木佐貫さんの中では、頼んだ作業はいくらゆっくりでももう終わるだろうとの算段で次の仕事を振る。だが実際は、まだ半分程度しか終わっていない。
こんなことがここずっと続いており、明らかに私は、簡単な仕事すら時間が掛かるコスパの悪いパート認定。
なので、思い切って米田さんに訴えてみた。
「すみません、ここずっとパソコンの調子が悪くて、思うように作業出来ないのですが。」
「ちょっと見てみましょうか。」
彼女が私のデスクに座る。
ふわっとデパコス売り場の香りがする。
キーボードを叩く指先は品のあるベージュネイル。派手ではないが、控えめにラメや小さなキラキラしたストーンが施されていた。
だが、見降ろした頭上にはちらほら白いものが混じっており、普段は見せない彼女のストレスを見た気がした。
「あー、ちょっとこれはPC変えないと駄目ですね。課長!ここのPC入れ替えたいんですけど、予備とかあります?」
「あぁ、あるある。じゃあ今、総務から貰ってくるよ。」
「課長が持って来てくれるようなので、良かったですね。じゃあ。」
それだけ言うと、自席へ戻ってしまった。
しばらくして、課長が私のところにやって来てPCの入った段ボールを置くと、
「はい、これ使っていいので。古いのはまたこの箱に入れて総務に持って行って。」
行ってしまった。
設定は、自分でやらなければならないの?IT企業での悪夢が蘇る。
何から手を付けて良いのか分からないし、今使用しているPCの電源をまず落としてーケーブルとか外して・・本体やキーボードも取り外して。
そもそもあれこれ勝手に引っこ抜いて、既存のデータが消えたりはしないか?
助けを求めるように米田さんの方を見るが、誰彼と電話をしておりこちらに気を留める様子などさらさらない。
花山さんに助けを求めようかーと隣をちらっとみるけれど、彼女も昼までに切り良く終わらせたい仕事があるのか物凄い勢いでキーボードを叩いている。
時計を見ると、11時45分。退社まであと15分。
結局、何をするわけでもなく日報をゆっくり旧PCで仕上げ、そのまま退社した。
来週のパートが憂鬱だ。
PCの初期設定くらい出来るのが当たり前なのだろうか。
この土日でやり方を調べ、何とかしなければならない。
出勤したら、誰かがいつの間に入れ替えてくれていたらいいのにーなんて夢みたいなことを願う。
やっぱり、事務職は向いていないのかも。
パートの宿題
