夏のはじめ頃から毎日チェックしている推し動画。
なんだか懐かしく胸の奥がギュッとするのは何故だろうとずっと思っていたけれど、そう、元彼の声に似ているからだ。
もう20年以上も前の、夫と出会う前の話。
子どもに毛が生えた、女の子ではないけれど女性でもない、でもキラキラしていたあの頃に出会った彼。
私の記憶の宝箱に大事にしまっている思い出の一つ。
そして時間が経つにつれ、その声の記憶だって私の脳裏で何百万回と再生されるうちに、段々擦り切れてしまい、本当の彼の声とは似ても似つかなくなってしまっただろうと思う。
いつものように、いいねボタンを押して。
さあ今日も頑張ろうとPCを落とそうとしたのだけれど、なぜだか分からないけれど、コメントがしたくなった。
こんな子持ちの冴えないおばさんが、きっとだいぶ年下だろうイケメンにコメントを送ること。
傍から見たらキモイし、大丈夫!?と思われるだろうけれど。
勢いで、でもおばさんだとバレないように文章を作る。
ーこんにちは、いつも動画見てます。朝のはじまりに、いつも元気をもらっています。ありがとうございます。
なんてことのない文章だが、おばさんっぽい絵文字とか使わないよう、だが堅苦しくなり過ぎないよう、でも年齢不詳な感じでコメントを送った。
送って、心臓がドキドキと音を立てていることに気付く。
コメント欄は、私だけではなく既にそこそこ人気があるのか50くらいあって、だからきっと返事だって貰えるとは限らないし、百歩譲ってお礼のハートマークくらいはくれるかなといった感じ。
なのに、何度も何度もチェックしてしまう。
ばっかみたい。
でも楽しい。
お金だって掛からないし、これくらいの押し活が私には丁度いい。
プチ推し活
