PRADAの紙袋

プラダ
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 昨日、夫がふらりと出掛けた。
ちょっと買い物だというので、本屋か趣味のバイク関係かと思っていたけれど、帰宅し、自室へ直行する夫を目で追ったら、コンパクトな大きさの紙袋にPRADAの文字。
ここで、普通の夫婦ならこう聞くだろう。


ーちょっと、何それ?プラダ?私に?


ー待って待って!何それ?なんでプラダで買い物なんてしてるの?自分の?


 実際は、何も聞けずにそのまま自室へ入り、また出て手洗いうがいをする夫の背中を恨めしく見つめるだけ。
夫の私物にプラダなんてない。遥か昔、ホワイトデーにプラダを会社の女の子にプレゼントしていたことを思い出す。
そして、その女の子はもしかしたら私の知る女なのでは?と疑惑がわく。

 今朝、夫は朝食も食べずに出て行った。
私なりに、精一杯の勇気を持って、何気ない風を装って聞いた。
夫は私が気付いてないと思っているのか、手元にキャンバス地のバッグを持ち、その中には例のショッパーがちらりと見える。


「どこ行くの?」

「夕方には帰るから。」


 私の質問には答えず、出て行った夫。
私はその続きを聞くことを諦める。聞いたところで、私の欲しい答えが返って来ないことを知っているから。


 彼女は今、こっちに戻っているのだろう。
そして、今後はどうなるのか。
退職することになっても、夫との個人的な関係は続くのか。
うやむやな関係のまま放置させているのは、私の方。
はっきりさせるのが、怖いのだ。



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