実家が引っ越した。
住んでいた玄関前には引越センターの段ボールが山積みで、もう入れない。
新居は築何年なのか、外観は古くアパートのような作りのこじんまりとした建物の1階。
ドアには鍵が掛かっていなくて、恐る恐る開けると、部屋は真っ暗。
振り返ると玄関ドアが二つあって、その一つの下部は大きな隙間が空いており、外からの風が入って来る。防犯対策も何もあったもんじゃない。
入ってすぐが狭いキッチン、その奥がリビングなのだけれど、奥の方に目を凝らすと弟が真っ暗闇の中で佇んでいた。
両親はまだ帰っておらず、この先この場所で暮らしていくことの不安と、老いて行く両親が手作りのロフトのようなベットを寝室代わりにするのかと思うと、薄暗い気持ちになった。
このアパートには、若い夫婦とその幼い子どもが住んでおり、私達と同じ家族構成でもまだ未来があるそれはこんなにも惨めで苦しい気持ちになることはなく、リビング一杯に敷布団を敷いて川の字に寝転ぶ彼らがなんだか眩しく羨ましくすら思えた。
老後の賃貸暮らし、終の棲家が無いこと。
あっちへ行きこっちへ行き、そうしてどんどん世界が狭くなっていく。