覚悟はしていたけれど、昨日、仕事を途中で切り上げ帰宅した私に夫がキレた。
しかし、私の中で夫に叱られるのと吉田さんとあの気まずい空間で何時間も過ごすのとでは、後者の方がしんどかった。
夫から叱られるのはもう慣れているし、反省のポーズを見せればいい。
「あなたさ、社会人としてあり得ないでしょ。PTAとかあるなら初めから伝えなさいよ。」
「すっかり忘れてて。ごめんなさい。」
ラインチェックをされるかもしれないことを考慮し、先日の運動会で予定を決めていたーということにしておいた。うっかり、電話があって慌てて出たーなんて嘘を付いてばれたら元も子もない。
念には念を。そしてそういう時に限って、チェックしないのが夫なのだけれど。
「いくら家族の手伝いだからってさ、信用の問題に関わるんだよ。今はちあきさんがいるからいいけどさ。無責任な人に任せられないよ、ったく。」
「ごめんなさい、でも、午前中だけとか無理かな。丸一日はちょっと色々負担があって。それに、仕事探しの時間も欲しいから。」
「え?だって週5でもなく数日だろう?どうせ出社するならがっつり一日学んだ方がいいんじゃないの?それに、あなた午前だけで業務理解出来る?もう時間もないんだぞ。そもそもここで手伝いも出来ないようじゃ、ほかで採用なんて無理だろ。」
「でも、どうせそんなに責任ある仕事回って来なそうだし。」
「え?どういうこと?責任って・・あなたにそんな責任ある仕事任せてないと思うけど。」
前職では経理課に所属していたこともある彼女。
夫から聞いたけれど、簿記だけではなく「証券外務員」という資格も持っているらしい。
夫以上に数字に強く、また専門知識を持つ彼女だからこそ、夫は絶大な信頼を寄せているのだろう。
私にはあんなに細かくあれこれうるさい夫が、彼女には何も言わないどころか任せっきりなうえに、むしろ注意すらされている。
要するに、「彼女がいなければ困る」状態になっている。
彼女には責任ある仕事を任せ、妻である私には責任のない仕事を任せる。
夫はいったい、私のことを何だと思ってるのかー
自分の能力はさておき、夫の言い草に無性に腹が立つ。
腹が立つから、言われるがまま動くことも馬鹿らしくなって来たのだ。
要するに、リタイヤしたい。
「正直、彼女が不在中に代わりになる自信がないの。今、彼女から教えて貰ってる仕事だけで本当に回るのか心配だし。」
「そこはリモートで何とかなるから大丈夫。ただ、せめて電話対応くらいはまともにやって欲しい。そんなレベルの高いことは求めてないから。普通に聞いてれば3日で引き継げるボリュームだと思うんだけど。彼女もそう言ってたし。」
私のいないところで、夫と彼女が私について話している。
それを想像するだけで、頭が痛くなる。
恐らく、たった一日で彼女は私の能力を見限ったのだ。
とてもじゃないが、重い仕事は任せられない。
自分が不在の間、取返しのつかないミスをされたりこれまで整えて来た業務内容をぐちゃぐちゃにされたらたまったもんじゃないのだろう。
だから、出来るだけ私に引き継ぐ業務を軽くし最小限にとどめたのだ。
それでも、彼女からしたら学生バイトレベルの業務だったとしても、私はミスの連発でどうしようもなかった。
「ごめんなさい、これ、どういう意味ですか?」
もしかしたら、一般常識かもしれないビジネスにおいて発生する用語。
何となく聞いたことがあるような気もするが、実際に意味が分からないから聞いたら驚かれた。
また、Excelのシートを誤って削除してしまったり、キーボードがどうにもこうにも反応せず、固まったまま30分程度何も出来ずにいた時、笑って「大丈夫ですよ~」と復元してくれたりロックの解除方法を教えてくれたが、内心は呆れていたのかもしれない。
なんとなく彼女が操作していたPC画面を見たけれど、とてもじゃないが私に理解出来るような内容ではなかった。
いや、時間を掛けて説明を受ければ出来るかもしれないーなんて、どんなに高く見積もったって、数か月は掛かると思う。
たった数週間で彼女の代打なんて、絶対に無理だ。求められていたのは、数週間での引継ぎ。
だが、初日の私の働きでそれが無理なことだと悟った彼女は、リモートで何とかしようと方向転換をした。
だから、昨日も切羽詰まった様子で夫のPCにかじりついていた。ろくに私に引継ぎもせずに。
もう求められていないのなら、私も割り切った方がいいのかもしれない。
夫から言われた電話対応や郵便物の整理、それに請求書などは彼女に転送する。
もうそれでいい。疲れた。
追記:::
コメントで、社会人としてあり得ないとご指摘を受けた。
仰る通りである。
吉田さんに話し掛けるのも、業務妨害だと。
ただ一つだけ言い訳をさせていただきたい。
彼女は、夫と「いい仲」であること。
妻子持ちである男性への接し方が、普通ではないということ。
普通ではない相手に対して、常識人として振舞えるほど私は人間出来ていません。