初任給

クリスマスプレゼント 家族
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 パートを始めてからめっきり実家へ行く頻度も減った。
子がまだ幼い頃は、何かにつけて実母と会う機会をとってご機嫌伺いをしていたものだが、子が中高生になり、部活や塾などに忙しくなったことで、会うのは春夏冬休みの合間といった感じ。
ただ今年はパートが年末ぎりぎりまで入っており、また夫の自営仕事も年末年始は挨拶回りなど大変で、私が同行するでもないけど気忙しい。
多少、申し訳ない気持ちがあって、クリスマスプレゼントを贈ることにした。

ただ、以前、カートをプレゼントした時にグチグチ文句を言われたこと。昔から、何をプレゼントしてもダメ出しされることを思い出すと「物」より「消え物」が良いかなと思う。
しかし、それだけだと味気ないかなと思う気持ちもある。


「これ、趣味じゃないのよ。まるで雑巾みたい!」


 かつて、母の古い友人が母の誕生日にくれたプレゼントのスカーフ。
今は仲違いして疎遠になっているらしいけれど、折角のプレゼントを私達に見せて笑いものにしていたことを思い出す。
親戚からのお中元やお歳暮、また私達子どもへのお祝いにくれたものも、すべてデパートで値段をチェックしたり、またラッピングがおかしいと「誰かから貰ったものを回したのよ!」なんて言ったりもする。
勿論、義実家からのお歳暮だとかにも文句をつける。


「こんなの食べないわよ~あんたいる?」


 母に何かプレゼントしようと思うと、こういったネガティブな思い出が蘇り、なんだか萎えてしまうのだ。
それでも、あと何回、生きているうちに母にプレゼントを渡せるのだろう。
そう思うと、複雑な気持ちになるのだ。
私は母のことを疎ましく思う反面、心の奥では愛情を求めている小さな子どものままなのだ。

ふと、母が使っていた財布が古びていたことを思い出した。
母の日でも誕生日でもない、ただのクリスマス。
クリスマスにプレゼントを渡す習慣など無かったけれど。
だからこれきりになるかもしれないけれど。
私がこの人生で一番といえるくらい、苦しい仕事をして得たお金で買うプレゼント。
まるで、初任給だ。
だから、特別な物がいいい。


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