あなたがしてくれなくても もういい

ベッド わたし
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 ドラマ「あなたがしてくれなくても」に嵌っている。
勿論、これを観るのは家族がいない日中。
昔、ネット漫画で無料部分だけ読んだことがあり続きが気になっていたストーリー。
恐らくドロドロした不倫漫画なのだろうと思っていたけれど、むしろ不倫というよりも夫婦関係に重きを置いた、そんな話だ。



拒否され続けるごとに擦り減る神経

 二人目を望んだこともあった。
いや、子どもが欲しいというより、夫にもう一度触れて欲しいー女としての欲求を「母性」というオブラートに包んでぶつけていただけのことだった。
しかし、何度か拒否されるうちに、プツリと切れた。
断られるかもという緊張感の中、それでも勇気を振り絞りそれとなくそんな空気を出したとしても、あっけなく玉砕。まるで惨めなピエロなのだ。
同じ屋根の下、じわりじわりと真綿で首を締められる感覚。
期待しては裏切られる、だったら、初めから期待しなければいい。諦めればいい。
擦り減った神経ー、もう見えるか見えないかの細いそれは、この先は自分と子どもの為だけに使いたい。




ドラマによって蘇る過去の感情

 主人公が断られるシーンと昔の自分が重なり、胸が苦しくなった。
私の場合は、副編集者の妻を持つ夫が、健気に料理を作って待っていても手付かずだったり、家庭ではなく外の世界に生きているパートナーに対して持つモヤモヤした感情や孤独感。
それが痛いくらい伝わって、つい泣いてしまった。
いくら手の込んだ料理を作っても、見向きもされない。
家にいても、こちらを見るでもないスマホやPC画面との会話。
一緒にいる意味、ある?という自問自答を繰り返しながら、それでも夫婦になったのだからと歯を食い縛り結婚生活を忍耐で続ける。

 セックスがあるなしではなく、あなたの心の中に私はいるの?という感覚。
もしいるのなら、分かってくれるよね?必要として求めてくれるよね?
せめて、優しい言葉を掛けてくれるよね?

 ドラマの主人公の夫ー、珈琲屋の店長である夫。
彼は浮気をしたし、それは決して許される行為ではないけれど。
でも、彼女のことを大切に想う気持ちは伝わって来る。
ダサいキーケース、星空を一緒に観に行こうと計画を立てたり、パズルの迷信に動揺し、一生懸命足りないピースを作ったり。
妻とだけセックスが出来ない、それも辛いけれど。
人間の心と身体はとても複雑で、医療や化学の力以上に神秘に包まれている部分もあって。
どうにもならないことも、きっとある。
愛する人を前にし、不甲斐ない自分をさらけ出したくないーそんなプライドだったりがプレッシャーになりうまくいかないことだってあるのだと思う。

 私は、主人公が少しだけ羨ましくなった。
あなたはまだ、愛されてるじゃないーと。


子どもがいたらレスになるという言い訳

 子どもが出来たらレスになるというのは巷でもよく聞く話。
育児は基本、振り回される。
家庭の中心には子どもがあり、その生活ペースを正常に回すことに母は必死だ。
それは、心身ともにとても疲れを伴う。
「親」になった夫婦は、モードの切り替えのタイミングを失う。
すやすや眠っている子がいつ起きるか、そんな心配をしながら絡むことなんて出来ないし、もし最中に子どもが起きたらー、見られたら、それはれっきとした「虐待」だ。

 私が中学生の頃。
まだ弟は小学生だったのだけれど、性の知識はそこまでなく、両親の寝室のベッドで友達とトランポリンをして騒いでいたことがあった。
母はパートで留守。私がいるから大丈夫だと友達を上がらせたのだが、弟の友達がベッドをぐちゃぐちゃにするものだから帰宅した後、メイキングをし直そうと布団をあげた。
すると、使用済みの避妊具が出て来たのだ。
弟や友達はその存在に気付かず遊んでいたようだったけれど、さすがに中学生の私は気付いてしまった。
そして、言いようもない嫌悪感。ショック、気持ち悪さ。
それを見なかったことに布団をバサリと掛け、寝室を出た。
父と母のそういうシーンを想像しただけで、吐き気がした。その日の夕飯は殆ど喉を通らなかった記憶がある。
残骸を見ただけであんな気分になるのだ、「最中」を目撃したら、そりゃあトラウマになるに決まっている。

 とはいってもー、
実際、子どもがいてもレスではない夫婦は山ほどいる。
スーパーで、体重100キロ越えとは思われる身なりも気にして無さそうなボサボサ頭のすっぴん女性が、年子の子どもを何人も連れて怒鳴り散らしながら買い物をしていたり、また赤ちゃんを抱いている姿を見ると、「旦那には愛されているのだな」と思い、自分が無価値な人間に思えて来る。

子どもがいるからレスになったーは、自分を守る為の言い訳に過ぎない。


女としての人生は終わりなのか

 夫とのことは諦めた。
それに、私はもうアラフィフだ。
なのにー。この言いようのない寂しさは何なのだろう。
この先、男性から指一本触れられない切なさ。女としての人生は終わりなのだろうか。
無性に、誰かに抱き締めて貰いたい時がある。
子も、もう高校生なので抱き締めることなんて出来ない。むしろ、子にはそういう男性がいつかあらわれるだろう。

 人肌恋しいーそんな夜。
私はぎゅっと枕を抱き締める。
自分の匂いのついた枕ー、それでもなんだか安心する。

 あなたがしてくれなくても、もういい。
多分、奇跡的に向こうから求めて来ても受け付けないだろう。
夫が近寄るだけで、顔をしかめてしまう。生理的に無理になってしまった。
感情に蓋をし続けて来たことで、夫を求める欲望が麻痺してしまった。

だからといって、他の誰かを求める訳にもいかない。
このまま枯れていく自分の身体を慈しみながら、淡々と過ごすのだ。
時に、刺激的なドラマに自分を重ねながらー。
昔の甘い記憶を辿りながらー。








 

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