ボウズ

　分かっていたけれど、ダブルワーク先の仕事がきつい。
時給が良いし、採用もすんなりだったけれど、要するに使い捨てなのかなと思い始めた3日目。
私より数日前に入社した人が、退職代行を使って辞めたことを知り、ネガティブな気持ちが伝染する。
周りの様子を見ていると、それが日常茶飯事のようだったのだ。

業務的には、事務のパートよりも簡単。覚えることも少ないし、マニュアルもしっかりしている。
ただ、ノルマだ。
ノルマのある仕事だから、要するに、それが達成出来なければ給料泥棒。
今日、隣の人がノルマを昼過ぎに達成し、周りから拍手喝采されていた。
勇気を出して休憩時間に話し掛けてみたら、もう3年目らしい。

「駄目な時はさっぱりよ。今日は運が良かったのかな。」

　私よりも何年も先輩だから、卑屈にならずに済むけれど。
5時間いて、何の成果もあげられなかったことに悔しいだとか焦りだとかよりも、他にも同じ様な人がいるからまだ大丈夫だという無意味な自己暗示の魔法が溶けるのはきっと時間の問題だ。

　帰り道、スマホにPTAからの連絡があり、昨夜のうちに返そうと思っていたのにスルーしてしまった。
ちょっと、今それどころじゃないんですけどーといった感じで、仕事をしているのは私だけじゃないし、むしろ委員長や副委員長はバリバリ正社員だったはず。
なのにキャパが小さい私は、今は自分のことで精一杯。来月は、自分が担当の作業をしに学校へ行かなくてはならないのに。まだこちらも準備ゼロ。

あっちもこっちもボウズで嫌になる。