自営業の妻という肩書

文具 仕事
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「あなた、まだ仕事決まらないの?暇ならちょっとこっちの仕事手伝いに来て欲しいんだけど。」

 突然、夫から仕事のオファー。
使えない妻認定を受けているとばかり思っていたので驚いた。
以前、吉田さんがコロナ濃厚接触者になった際、事務仕事を代わりに引き受けて散々な目に合った。
見様見真似で請求書の処理などをしたのに、データをおかしくしてしまい夫にも呆れられたのだ。
もう勘弁ーそう思っていたのに。

 なかなかパートが決まらないことで、これ以上夫から色々言われるのも嫌だったし、仕事を手伝うことになれば夫からの圧も少しは和らぐのではないかと思い、渋々了承した。

 今回のオファーは、長いこと入院していた吉田さんの父親の容態が悪いらしく、しばらく長野の実家に帰りたいと申し出た彼女自身からのものらしい。

なんだか宣戦布告を受けたようで、売られた喧嘩は買ってやるーじゃないが、私が夫の妻であり自営業の妻なのだということを示したくなった。
それに、子だって受験の時に何度も事務所へ行っているのに、妻の私はまったく足を踏み入れないというのもおかしな話だ。
赤の他人に家を乗っ取られているような嫌な感覚は常に付きまとっていた。

 なので数日間の引継ぎをし、数週間だけ私が出来る範囲で彼女の仕事を引き受けることにした。
それに、ただでさえ決まらない座って出来る仕事。
ここで事務仕事をしながらパート面接をすれば、即戦力として認めて貰えるかも。
結婚してからのパートで座って出来た仕事は、あの短期事務サポートのバイトだけ。
そこからは、清掃や総菜パートなど、オフィスワークから離れていた。
ピンチはチャンス。
給料は出ないけれど、勉強だと思えばいい。

前向きに捉えたら、少しやる気が出て来た。



 



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