仕事納め

オフィス 仕事
スポンサーリンク

 昼休み。
ざわざわとフロアが騒がしいのは、皆、既に年末モードに突入しているからだろう。
挨拶する手順やタイミングを考えてばかりいたお陰で、午前の仕事が進まなかった。
だが、かろうじて年末までに〆切だった作業は、実は仕事休みの日に持ち帰りでしたので間に合った。
Excel上、計算式が良く分からず進まない作業だったので、こうでもないああでもないと検索しながらなんとか想定通りの数字が出るようになった。こんな風に時間外労働をしないとこの職場で求められるスキルの穴埋めは出来ないのだ。

昼のチャイムが鳴った瞬間、鞄からチョコレートの小袋を取り出し、何より先に隣の花山さんに声を掛けた。

「花山さん!!」

 え?っといった表情でこちらを見る花山さんに、押し付けるように小袋を差し出した。

「今年、本当にお世話になって。色々迷惑も掛けてしまって。私が仕事が出来ない部分はいつもフォローしてくれて。本当にありがとうございます。」

「えー、私、なんにも用意してない~もしかして、これってみんなの分も用意したの?」

「え?あぁうん・・」

「ごめん、それ、ちょっとやめてくれないかな?私・・っていうか、黒ちゃん!」

「はい?」

「米田さん達に今年もお世話にって何か用意した?」

「いや。なんも。」

「芝生さん、皆に用意したみたいで、うちら何も用意してないよね・・」

「でも、大したものじゃないんで?あ、黒川さんの分もあります!」

「あ・・りがとうございます。」

 困り顔の2人を前に、私はまた空気の読めない行動をしてしまったのだと悟った。
頭をフル回転させ、どうしたらうまく治まるか考えた挙句、

「じゃあ・・せめてお二人だけでも。パート仲間ということで本当にお世話になったので!!」

「いいの?ありがとう。」

「そんな気を遣わないで下さいね。私達、時給で働いているんだし。これ、全部用意したんだったら時給分飛んでますよね?」

 黒川さんが、遠慮がちに受け取りながらつぶやく。
だが、なんとか2人に受け取って貰えた。


「こちらこそ、お世話になりました。また来年もよろしく。」

「よろしくお願いします。」


 2人は丁寧な挨拶を返してくれ、そのまま顔を見合わせ、ランチに連れ立って行った。
ほっとし、社員の米田さんと木佐貫さんに挨拶だけして退社しようと振り返ると、もうそこには誰もいない。早々に外に出てしまったらしい。
やっぱり私はこうしていつも空回る。でも、沈黙が続いて気詰まりだった花山さんと会話らしい会話が出来た仕事納めだったので、少なからず穏やかに年末年始は過ごせそうだ。

タイトルとURLをコピーしました