人見知り発動

祈る
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 新学期。
子にとって良いクラスであることを願っていた。
帰宅し、玄関ドアを開けて子の顔を見た瞬間、すべてを悟った。
表情が暗い。疲れているのとは違う、お先真っ暗といった風。
だが、努めて明るく振舞う。



「新しいクラス、どうだった~?」


 本当は期待していたのだ。
午前授業だったし、友達と昼でも食べるか新しいクラスでカラオケだとかで遊んで来るだろうと。
だが、真っ直ぐ帰宅した子の帰りは正午。これはまずい。
私の問いに答えることなく、黙ったまま手洗いうがいをし、制服から部屋着に着替える。
メイクも落とし、すっぴんになった子の顔は更に泣き出しそうでこちらまで胸が痛くなる。


「お腹、空いた。」


 それでもお腹が減ったと言うからまだ救われる。
子の大好物を用意していて良かった。液は既に用意していたのですぐに出来上がったカルボナーラ。



「美味しい。」


「良かった。食べるかどうか分からなかったから迷ったけど、準備しておいて。で、クラスは友達となれた?」


「知ってる子、誰もいなかった。」


 まさかの答えに狼狽えそうになるけれど、ぐっと堪える。私が不安定になってどうするのだ。
母親だろう。こんな時だから、どんと構えて子の話を聞かなくては。 


「話せそうな子とかさ、近くにいない?」


「一番前の席だし、隣は男子。もう隣はちょっと・・アニメ好きっぽくて話合わない。」


 何を贅沢言ってるんだーと思ったけれど、いや、そうではない。
ぼっちになりたくないからといって、気の合わなそうな子に話し掛けること程、双方にとって良くはない。


「後ろは?」


「分かんない、男子だったかな。でもクラス名簿見て、知ってる名前殆ど無かった。」


「一年の時、仲良かった子は?」


「クラス分かれた。私以外、みんな選択科目一緒だったから、他の友達はみんな一緒で盛り上がってた。」


「そっか・・だったら、同じクラスだった子に話し掛けてみたら?」


「一番あり得ないよ。だって、去年仲良くならなかった子なのに今年一緒になったってだけで距離縮まる訳ないじゃん。むしろ、お互い気まずいし。それに、その子は友達いたっぽいし。」


「じゃあ、今日は誰とも喋ってないの!?」


「うん。声出してない。」


「一人で帰って来たの?前のクラスの友達とは?」


「なんか知らない子達と更に大きいグループになって盛り上がってたから、声掛け辛かった。」


「そっか・・」


 一人でとぼとぼ下校した子を思うと、苦しい。
まだ友達を作るチャンスは往々にしてあるけれど、人見知り発動中の我が子はうまく立ち回れるだろうか?
どうしたら良いのか。見守ることしか出来ず歯痒い。私の時はーなんてアドバイスなんて無意味だ。私だって苦労したのだ。そして大人になった今もそれは変わらない。
高2での最大イベント、修学旅行。
その前に、今月には社会科見学と称した遠足がある。
そうだ、入学したての頃だってそうだった。こんな感じだった。
知り合いがまるでおらず、ぼっち弁当の日々を数日過ごしたらしい我が子だったけれど、4月の遠足で一緒に回ったグループの子と仲良くなり、輪が広がったではないか。
このイベントで、どうか友達が出来ますようにー私の就活なんてどうでもいいからーと願掛けしてしまう親心なのだ。






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