エンドロールにはまだ遠い

カチンコ わたし
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 退職して、まだ一か月も経っていない前職場。
一日に何度もHPを眺めてしまう。もう日々のルーティンになっている。
いつものように、変わり映えのない画面に目を落とすと、トピックスに’’NEW”の文字。
クリックすると、新入社員のブログ更新となっており、あの男の子が書いたものだと分かる。
自分のデスク紹介をしており、彼の席に飾ってあったフィギュアを思い出したから。
あんなに挙動不審でコミュ症だった彼が、会社の顔となっている。
当初は私も仲間意識を抱いていた彼。自席に趣味のものを飾れるくらい、あの職場に馴染んでいるのだ。


 綺麗なオフィスー、休憩所はカフェテリアになっており、座り心地の良いソファーがある。
ざっくばらんなミーティングに使われることも多い。
私は殆どそこを使うことは無かったけれど、入社当初はまるでドラマの中のようなオフィスに身も心も弾んでいたことを思い出す。


 私が辞めても、当たり前だが滞りなく業務は遂行されている。
組織図では、リーダーが幹部になっていた。新年度になり、異動もあったのだろう。
自分が辞めたくて退職したのに、未練たらしく妄想するのだ。
私に能力があったらー
あのキラキラしたオフィスで、何の取り柄もなかった自分から脱却し、人生逆転出来たかもしれない。
なりたかった自分。我が子からリスペクトされる母親。
自立し、夫とも対等な関係を築けるようになり、また違った家族の形を手に入れられたかも。

かもー
かもー

 不毛な「かもー」は、何も生み出さない。
私は逃げたのだ。楽な道を選んだのだ。
あの時は納得したはずなのに、この罪悪感と後悔の入り混じった感情が湧くのは何故だろう。
退職日、思い掛けない周囲からの労いに勘違いをしているのか?
手に入れられなかった未来は、より一層輝きを増し、惜しく感じる。
ただ、今ここにある現実としっかり向き合い、私は私らしくいられる居場所を探し続けるしかない。
裏方でもいい、エンドロールに一瞬でも自分の名が流れること。私が「そこ」にいて良かったと思える、思われる場所に辿り着く為に、歩みを止めるなと自らを鼓舞する。

 

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わたし
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隣の芝生
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