菓子折り

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 針金さんにラインをした翌日、チャイムが鳴りドアスコープから覗くと、彼女とご主人。
これは面倒なことになってしまったーと大慌てでマスクをし、すっぴんを隠してドアを開けた。


「こんにちは、今、大丈夫ですか?」


 なぜかこちらが悪いことをしているような気になり焦り、彼らが口を開く前に、あのラインについて言い訳がましい台詞を口にする。



「昨日は失礼なラインしてしまって御免なさい!あの、本当に私はまったく気にしてないですし、猫はむしろ好きなんです。いや、もっと言えば私も飼いたいくらいなもので。主人がアレルギーでなければ・・」


「いや、ご迷惑というか気を揉ませてしまい申し訳ありません。あの、猫はいます。ただ、これは飼っているというか預かっているだけなんです。息子がちょっと海外出張で預け先が無かったもので・・」


「あ?そうなんですね、息子さん?はぁ・・そうですか。」


  飼っている訳ではないことに安心したけれど、それでも夫に見付かれば厄介なことになるなと内心思う。


「それでですね、これ、良かったら召し上がって下さい。」


「え?」


「夫婦2人では食べきれないので、貰って下さい!」



 ご主人の方が、紙袋を差し出す。断る雰囲気でもなく、この場の気まずさから一刻も早く逃げたく受け取った。



「ご主人にもよろしくお伝え下さい。」



 なんだか向こうは勝手に和解ーというか、こちらの了承を得れて良かったといった感じでその場を後にした。
玄関ドアを閉め、ダイニングテーブルにいただいた紙袋を置き、中身を確かめる。
それはそれはご丁寧に包装された菓子折りで、いつも針金さんがくれるお裾分けとは違う、「わざわざ買って来た」と思われるものだった。
あぁでも言わないと私が受け取らないと思ったのだろう。
しかも、包みリボンに何かが差し込まれており、クオカード3000円分まで。
これは受け取ったら駄目なやつではないかー賄賂?といえば大袈裟だけれど。
なぜこうも次から次へと面倒ごとが降りかかるのだろう。
これはすぐに返すべきーと頭で分かっていても体が動かない。
面倒が重なると、放置になる。まるで頭の中がごちゃごちゃしてごみ屋敷になりそうだ。



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