月一清掃

箒 生活
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 今朝は、月一清掃の日。
各棟、それぞれ住民が集まり階段やエントランスの清掃をする。
とはいえ、井戸端会議のようなもの。
自治会のちょっとした連絡等も、この時に済ませることが多い。
夫はこういう場に休みであっても出ないので、私が出る。
もうここで十年以上やっている習慣だが、毎度のことながら億劫。

「おはようございます。」

 挨拶したところで、皆、ぺちゃくちゃそれぞれがお喋りに興じてスルーされる。
なので、軽く会釈がいつものこと。
さっさと持ち回りの場を箒ではいて、なんとなくやっている感を出して、終了時間が来るのを待つ。
終了時間には、今年度の棟の代表が連絡事項を皆の前で知らせ、解散。

そして今朝。
いつものように清掃を終え、各棟ごとに代表のところへ行き、連絡事項を聞いた。


「えっと、実はこの棟で猫を飼っている人がいるというクレームが出ています。管理事務所からクレームが来たと連絡がありました。」



 針金さんもその場にいたのだが、目を合わすことが出来なかった。
朝、他の人と楽しそうに歓談していたので挨拶もしていない。
なので更に気まずい。


「現在、調査中です。もし猫を見掛けた方がいましたら一報お願いします。ここはペット禁止なので。」


 そしてそのまま解散。
それぞれ自宅へ戻る。
針金さん含む数人がエレベータ―に乗る。


「猫だって、困るよね。」


「前もあったよね。でも、あっちの棟では犬も飼ってるって聞くよ。」


 針金さんの声は聞こえない。
そして私達の階に到着。


「それじゃあ。」

「お疲れさまでした。」


 私と針金さんだけエレベーターから降りる。
気まずい。
そして、後ろに彼女がいるのに振り向けず、黙ったまま自分の家の玄関に到着。
何か口にした方がいいー分かっているけれど言葉が出ない。


「お疲れさー」


 せめて、挨拶くらいして別れよう。そう思い、勇気を出して振り返ると、思い切りこちらを睨む彼女の目。
プイっと彼女は顔を反らし、ドアを開け家の中に入って行った。
まずいことになった。完全に、私がクレームをしたと勘違いしている。いや、実際我が家の夫がしたので彼女からしたら私も敵なのだろうけれど。
ものすごく、後味が悪い。


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