働く意味

コンビニ 仕事
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 短大時代、白紙のエントリーシートを前に、就職センターの職員はこんな言葉を私に掛けた。

「あなたは、働くってどういうことだと思う?」

 その問い掛けはあまりにも漠然としていたし、単純に内定が欲しかっただけの私にとって、面倒に他ならないものだった。
目の前にいる職員に、あなたの仕事は楽しいですか?と聞き返したい衝動を抑えながら、どこかで見聞きしたような言葉を返した。


ー「傍」を「楽」にさせることかなと思いますー


 職員は、なんだか腑に落ちない顔で、きっと彼女が求めていた答えじゃなかったのだろう。学校のマニュアル規定に添ったようなまったく心に響かない文字の羅列を私に向けたけれど、互いの欲しかったリアクションは宙に浮かんだまま所在なく漂い有耶無耶になっていく。


「バイトの時間なんで。」


 嘘でその場を凌ぐのは、あの頃から得意だった。
職員は、ほっと安堵の表情を見せた後、私の次に並ぶ同クラスのギャルに手を振った。
盛り上がる2人の声がどんどん小さくなっていく。
女子アナになりたいんだよね~なんて、なれる訳ねーだろ!と、心の声を見えない2人に投げた。
その何年後か、彼女は地方のラジオ局で働いていると風の噂で聞いた。


 どんなことでも、小さなことでも、自分を生かす為に働くのだなと今は思う。
前提にあるのは、他人よりやっぱり自分。自分を大事に出来なければ他人を大事に出来ない。
ある瞬間、没頭出来たり。またある瞬間、遣り甲斐のようなものを感じたり。
楽しかったり、達成感を得たり、自分らしくいられたり。


 職場近くのコンビニのイートインで、100円コーヒーを飲みながら気合を入れる。
このたった10分の時間は、自分を奮い立たせる癒しだ。
私のいる意味ありますか?
そんな言葉をぐるぐる抱えながら、今日もひたすらデータ入力で3000円稼ぐ現実を続ける忍耐力、私にどれほどありますか?








 

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