敬老の日

祖父母 家族
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 すっかり敬老の日を忘れていた。
なんやかんや、心も体も忙しくしていたせいで、頭からすっかり抜けていた。
だが、義両親も実両親も、子の祖父母であって私の祖父母はとうの昔に他界している。
いつまでこうやって、嫁として娘として気を遣いながら生きて行かなくてはならないのかー
今回はもうスルーしてしまおうか、ギリギリまで迷った。
本来なら、子が自分の足でプレゼントを買いに行き、いや、プレゼントなんてなくてもいい。
自発的に、電話をするなり気を掛けるなりすればいいのだ。

「じいじとばあばに、せめて手紙くらい書きなさいよ。」

「分かった、分かった。」


 相変わらずスマホに集中しながら、適当な返事。
もう一度、声を掛けると、


「アイちゃん達もいるし、別に私ひとりやらなくたって問題ないでしょ。」

「そういう問題じゃないでしょ。それに、ママの方のばあば達は花子しかいないんだからー」

「あー、分かったよ。でもさ、なんでママってばあばにいつも気を遣ってるの?」


 確信を付かれ、ウっとなる。
それが子に伝わったのか、更に私に向かい反抗的な言葉を並べる。


「どうせ、私が書いた手紙も全部チェックするんでしょ。どうせ書き直しさせるなら最初からママが満足するように書けばいいのに。ばあばが喜ぶ言葉は、ママが一番よく分かってるでしょ!」


 なんてことをー

ここ数年、夫との関係、親との関係ー私の歪んだ人間関係を子にそれとなく指摘されるようになった。
生意気に思うこともあるが、ドキリと刺さる言葉も多く、それが真実なのだなと思う。
子は、見てないようでよく見ている。
なんだかんだで私に一番近い存在だからだ。


モヤモヤしながら、子の言葉を反芻する。
確かに、敬老の日と言いながらも、毎度のことながら子には散々ああしろこうしろとうるさく言い続けている。
幼い頃は、似顔絵や工作ー。
それも私が指示して来た。
ちゃんと飾れるようなもの。
母が満足しそうなもの。
孫からのプレゼントなのだから、菓子の空き箱やチラシの裏に書いた手紙だって、普通の祖父母は喜ぶだろうことが、私の母にはそれが通用しないことを知っていたからだ。

実母に対して必要以上に気を遣う私を見て来た子は、反して私の顔色を伺うことなく言いたいことをはっきり面と向かって言う。
それが私にとっては嬉しい反面、きついこともある。


「はい、出来たよ。」


 子から渡された、敬老の日に送る祖父母への手紙。
いつものように、封はしていなかったが、中身を見ずに事前に買った贈り物の中に入れて出した。
来年は、子の意思に任せようーそう心に決めた。




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