墓参りランチをした。
久しぶりの、母方実家の墓参り。父方の墓参り程に頻繁ではないことは、母が長女ではないからだ。
足腰が悪い伯母と腰を痛めている母なので、N恵が車を出してくれることになった。しかも、実家まで迎えに来てくれるという。さすがに私の自宅まで来てもらうのは申し訳ないので、私は早めに実家に出向くことにした。
母の機嫌はここ最近の中で一番良くて、妙なアドレナリンが出ている感じ。N恵が運転する車中でも、伯母と母のマシンガントーク。時々N恵と私が口を挟む程度。
寺に到着し、墓石の掃除。仏花を飾り、手を合わせる。暑すぎるので、高齢の2人の体を考え15分程度でその作業を終了させ、その日のメイン、ランチへ。N恵が予約してくれたお洒落な店は、以前、2人で行こうとした店よりカジュアルな感じではあるものの、まあまあお値段の張りそうな店だった。
一応、虎の子から3万円程持参して来た。これはあくまでも、最悪の場合を想定して。だが、その店のメニュー表を眺めていたら、恐らくその最悪が実現しそうで眩暈がした。そんな私の気も知らず、皆は思い思いにどのコースにするか楽しそうに相談しており、だが母が5000円のコースを選んだのは意外だった。
「私、こんなに食べられないわよ。このコースでいいわ。」
そう言って、比較的コースの中でど真ん中の価格帯のものを指した。そうなると、伯母もN恵も私も皆が同じものをオーダーしたのだった。
話題はそれぞれの近況。加え、私の仕事についてあれこれ聞かれた。いつもの如く、あることないこと恰好つけてしまう。本当はそんなんじゃないのにーだが、母だけでなく自分のちっぽけなプライドを満足させる為の嘘は、呼吸をするかのように自然に口をついて出る。情けないけれど、それが私で昔から変わらない。事務パートで正社員登用の話は、黒川さんへの打診であって私ではないのに。異動の話は本当だけれど、つい浮かれて話を盛ってしまったのだ。
「そうそう、4人で旅行行く話。花ちゃんのところはもう大丈夫だけど、うちは今年が本番だから、来年だね!」
無邪気にN恵が言う。伯母も乗り気。母も勿論、乗り気。
「コロナだなんだで、延期になってたしね。私達もいつまで生きるか分からないし、行ける時に行っておかないと後悔するわね。」
「どこにしようか~?世界遺産?」
「温泉がいいい?時期はどうする?思い切って、海外とか?」
スマホ片手に、N恵がサクサクと旅行のあれこれを提案する。私はそれに引きずられるように、スマホを開くが画面は勿論、心も真っ暗。
「予算は、一人10万はかかるよねー」
ズンっとその言葉が私に圧し掛かる。
母の分は?それぞれ自腹なら何とかなるけど・・N恵は勿論、伯母の分も出すのだろう。何も言われなくても娘としてそうするのが当然と思っているし、お金には困っていない。だが、私は?期待しているだろう母を思うと、気持ちは塞ぐ一方だった。
「モノより思い出だよね。お金持ったまま天国には行けないしね。」
簡単に言う。
N恵のその想像力の欠如に苛つきながらも、会話の流れを止めることが出来ずにいた。
コースのデザートが終わり、私にこそっと耳打ちをするN恵。
「うち、ママの分も出すんだけど・・そっちはどうする?まとめて私がカードで支払うから、後で清算してくれたらいいから。」
「あ、うん。私がお母さんの分も出すよ。いくら?」
差し出された明細は、思った金額より多かった。5000円が2名分で1万円だと思っていたのに3000円程オーバーしていた。後から知ったが、それはドリンク料とサービス料だったらしい。
「じゃあ次に会う時までに、それぞれ行きたいところを決めておこう~」
正直言って、辛い。断りたくても断れない。独身の、買い物依存に走っていたあの頃はこんな風に思わなかった。むしろ、喜んでその誘いに乗っていた。その頃の私を知る彼女らが今の私の心の内を知る由もない。
金銭感覚が違う親戚付き合いは、苦痛でしかない。だがそれも親孝行だと思って我慢するしかないのだろうか。
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