認知症の始まりに、怒りっぽさと食べ物の執着がある。
実家に行くついでに、両親の買い物に付き合った。
予め買うものは決まっていたので、スムーズに買い物を終えるだろう。そう思っていたが。
昼時ということもあり、レジは長蛇の列。
ようやく列の半分くらいまで進んだな、という時に、父と母が言い合いを始めた。
「なんか牛丼が食べたいんだよな。牛丼、持って来てもいい?」
「え?私は食べたくないわよ。」
「俺が食べたいの!」
「牛丼なんて、夜食べるものじゃないの。この暑いのに。家に素麺があるんだからそれでいいわよ。」
「じゃあパンでもいい、あのパン屋で適当に買うから、お金頂戴。」
「そんなもの食べたら、夜が入らなくなるわよ。だっておやつだって家に団子があるんだから。」
「団子は別に要らない。俺は肉が食べたいんだよ、本当は。」
「だから、私は食べたくないの。」
「いやね、俺が肉が食べたいの!だってもうずっと肉を食べてないじゃないか。」
この会話を、同じような感じで3巡程している。
母が首を縦に振らないことで、父もますます粘着的になる。しばし沈黙になったかと思えば、また振り出しに戻るかのように、父が腹が減ったと言い出す。そして母が、私は減らないという。お互い、平行線。父も我儘だし、母も的を外れた返しをするのだ。
恥ずかしい・・
先日、義母と義姉を交えて義父の見舞い帰りに回転寿司での出来事を思い出した。
なんていうか、周囲を気にせずまるでそこが自宅であるかのようにヒートアップする家族。それを客観的に見てしまう自分。同化出来ないけれど、傍から見れば私も彼らの家族であるから同じ側の人間なのだとジャッジされるだろう不満。
このやり取りを聞かされ続けることにストレスを感じ、痺れを切らして私も口火を切る。
「いいじゃない、牛丼。私が取りに行くから。」
「あんたは黙ってて。この人がおかしいのよ。何も動かない癖に、腹が減ったってそればかり。だって朝だってちゃんとしたもの出したのよ。なのに、おかしいわよ。肉だって出してるわよ。まるで全然食べさせてないかのように言うなんて、ボケたんじゃないの!?」
「おい!お前!いい加減にしろよ!!」
突然、父が怒りを露わに拳をあげた。だが、その細く頼りない筋張った腕を振り上げたところで母が怯むこともなく、呆れたようにその腕を振り払った。
「やめてくれない?ばっかみたい。」
「お前、ぶっ飛ばすぞ!」
周囲の視線が気になる・・牛丼くらい・・とも思うし、母も何をそこまで意固地になるのか。
父だけでなく、母も年々怒りっぽくなっている。元々の気質がそうなので分かりづらいところもあるが。
買い物に付き添っただけで、どっと疲れた。
認知の始まり?
家族
