花山さんとのランチは、バタバタだった。
午前中、単純作業ではあるけれど、昼までに仕上げなくてはならない仕事を振られ、トイレも我慢しつつそれでも昼のチャイムから5分経ってしまい、彼女を待たせてしまった。
「大丈夫よ~焦らなくて。」
私の隣の空き席に、ランチバッグ片手にどかっと座り、スマホをいじる彼女。
佐藤課長や他の人達もいるのに、まったく気にしない。
私が逆の立場なら、別の場所で待ってるねーと耳打ちし、その場から離れるのに。
なんとか終わらせ、バタバタと職場から出る。彼女おすすめのイタリアンの店は、こじんまりとしているが可愛らしい外観で、店内は賑わっていた。予約を取ってくれていたこともあり、すぐに席に通された。
「何にする~?」
ランチセットーパスタとサラダドリンクのセットと、ピザとサラダとドリンクのセットがメインらしい。だが、そのセットの金額が高い。てっきり1000円ちょっとかなと思いきや、1800円・・デザートをもし頼めばそれにプラス500円。
「お互い、パスタとピザ頼んで、シェアしない?」
「あ。うん・・」
「じゃあ芝生さん、パスタ選んで~私はね、このピザが食べたい!」
シーフードピザを頼む彼女。ボンゴレが食べたいなと思っていたが、魚介だらけになってしまうので、無難にトマト系の厚切りベーコンと茄子のパスタを頼むことにした。
「デザート、どうする?」
「でも、時間なくない?けっこうピザも大きいし食べきれるか・・」
「そっかぁ~じゃあまたの機会にだね。あー、ワイン飲みたくなってきた。頼んじゃお。」
仕事中だというのに、彼女はグラスワインを頼んでいた。私も勧められたけど、断ると「まじめだね~」と鼻で笑われたことにちょっとカチンとし、じゃあ私もーと彼女の誘いに乗ってグラスワインを頼んでしまった。
それから、ハプニング。サラダやパスタはすぐに出て来たものの、ピザがなかなか出て来ない。職場まで歩いて5分とはいえ、昼休み終了まで15分を切り、気持ちが焦る。
「来ないね~どうしようか。キャンセルする?」
「え、無理じゃないそれは・・」
「すみませーん、あの~ピザ頼んでたかと思うんですけど~もう仕事に戻らないとなんですよぉ。ちょっと間に合わないんですけどあとどれくらいかかりますかぁ?まだ掛かるんだったらキャンセルしたいんですけど~」
「申し訳ありません、少々お待ち下さい・・」
パートだろうか、私たち世代の女性のホール係が、すぐに裏方のキッチンへ。すると、大声が聞こえる。
「オーダーも多いし、窯のスペースだって限られてるんだよ!順番なんだし焼く時間だってあるんだから、そんなこと言わなくても分かるだろうが!」
「でも・・・〇×$%・・」
「レンジであっためるピザじゃないんだからさ!そんなすぐ出せる訳ないだろうが!!」
ざわざわしていた店内が、店主の怒鳴り声で静まり返る。いったい、誰が店主を怒らせた?的に、辺りを見回す客がちらほら。私の心臓もバクバク音を立てる。がー、花山さんは、ものすごい形相をしていた。
「何あれ??あり得なくない?こっちは客なのに!もういい!出よ!!すみませーん!!!」
店員を呼びつけ、お会計をお願いします!とスマホを取り出す。
まだ、パスタだって半分は残っている。サラダも・・強いて言えば、グラスワインは空いているけれど・・
ちょっと落ち着いてーと言うよりも先に、さっさとペイペイで支払いを済ませる彼女。力任せにドアを開けスタスタと行ってしまった。
私もレジに行き会計をしようとしたら、一緒に彼女が会計をしたとのこと。
「お騒がせしました・・」
気まずくもそう言い残し、店を出て彼女の後を追う。
ものすごいスピードで歩いていた彼女は、ようやく歩く速度を落として振り返った。
「ごめんね。でもさ、有り得ないよね。我慢出来なかった。」
「あぁ・・うん。あ、それでいくらだった?」
「えっとね、4000円くらいかな。でもいいよ、私が払う。だって、私が勝手に途中で店出たし。」
「そういう訳にいかないって。払うよ!だって私もワイン飲んだしパスタも食べたしー」
「いいいい。要らない。大丈夫!それにしても、ムカつく!口コミ、絶対書いてやろう。」
彼女を敵に回したくないーそう思う。
そして、パスタは抜群に美味しかったからきっとピザも美味しいのだろう。でも二度とあの店に行くことは出来ないなーと残念に思う。まあ高いから簡単に行けるわけでもないけど。
結局、まったくゆっくり出来なかったうえ、彼女から何か話があった訳でもなく、ただのトラブルランチで終わった。
