一気に気温が下がった朝。
子は、元気に登校した。
私も久しぶりに夫と子、二人分のお弁当を作った。
今日は冷たい雨も降るし、一日家でゆっくりしよう。
買い物にも行かず、のんびり過ごす至福の時間。
引き出しの虎の子を勘定した。
今月のパート代は、休職した分少ないだろう。
夫も、子が救急車騒ぎもあったことでパートを休んでいることは了承している。
来週から出社すると思っているだろう。
ネットで求人を見るけれど、これといった仕事は無い。
辞めるにしても、次を決めなくてはならないし、あの苦労の日々を思い返して天秤にかける。
ふと、映画が観たくなった。
若い頃、デートで観た映画。
古いDVDを引っ張り出し、皿洗いなど午前の家事もそのままにその世界にどっぷりと浸かった。
懐かしい俳優達の名演技、映像と共に流れる音楽。
私は気付くと20代前半にタイムスリップしていた。
映画の内容は悲しくもないのに、エンドロールでは涙を流していた。
あの頃は、無敵だったなと思う。
一年の長さは20分の1だったし、還暦なんてまだまだ遠い未来だったから。
今は、一年の長さは50分の1、時の流れは相対的に短くなってしまった。
毎日が同じことの繰り返しになっていく晩年は、新しい経験を積んでいく幼少期から青年期にかけての時間の経過とは違い、刺激も少ない分、あっという間に一日が終わる。
子どもの頃、あんなに長く感じた一日は、新しい出会いや経験がそうさせていたのだと思う。
休職中、仕事をしていた日々よりもずっと、あっという間に日々が過ぎていた。
夏からの4か月は、月単位ではなく年単位だと思えるくらいに今思えば長く感じる。
辛くしんどい日々は、案外、充実していたのではないかと思えるのは、今こうしてゆっくりと休息を取れているからだろう。
好きなことしかしない一日。
部屋着のままただぼんやり、映画をぼーっと観てごろごろすること。
好きなタレントのチャンネル動画を観ること。
スマホで今気になっていることを検索したり、うたた寝したり。
家族のお弁当の残りをつまみに、ちょっとだけワインを飲む昼下がり。
なんて幸せなんだろう。
ただそう感じるのは、しんどい日があるから。
仕事の後の一杯がとてつもなく美味しく感じるように、人間は自分の暮らしの中にメリハリを無意識に求めている。