年始挨拶

お節 家族
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 気の重い義実家訪問。
だが、昨夜に長女一家がインフルで来られないとの連絡があった。
なので、集まったのは次女家族と我が家。
お節はお取り寄せ、それ以外のつまむものは次女と三女がデパ地下で揃えるからと、我が家は今回、お酒担当だった。
むしろ、お酒の方が高くついた。
ビールは箱買い。そしてシャンパンで1万、ワインも赤と白をそれなりのものを夫が選び、カード払い。
今度の請求が怖い。


 義母の調子は良く、少しだがキッチンにも立ったそうだ。
カニしゃぶの準備を義姉らとしていたので、数年前の介護が必要だった頃が嘘のよう。
その代わり、義父が一気に老け込んだように見えた。
夫は到着するとすぐに男性陣のテーブルへ行き、飲み始めた。
子は、あいちゃんと一緒に過ごすのかと思ったのだけれど。
あいちゃんと甥がいるテーブルには寄らず、スマホにイヤホンで私の傍にいる。


「花子、メイク濃くない?なんかギャルっぽくなったね。」


 三女が言う通り、見た目が派手になってしまった従姉妹に戸惑うあいちゃんの気持ちが手に取るように分かる。
あいちゃんは、正統派美人といった感じで。黒髪サラサラストレートヘア。
中学生だし、メイクもしてないだろう。
ただ、品があるというか、良いとこのお嬢さん空気をまとっていた。


 食事が始まり、既に飲み始めていた義姉らは、私達が持参したシャンパンを追加で飲む。
そのペースの早さで嫌な予感はしていたけれど、私に絡み始めた。いつもの展開だ。


「カズの仕事はどうなの?うまくいってるの?私達から聞いても何も言わないから。」


 夫が口を開かないのに、私が開く訳にもいかない。
何もしらない体で乗り切るしかない。


「何も知らないって・・そんな訳ないでしょう?だって、仕事の手伝いしてるんでしょう?」


「いえ、私もパートがあるし、深いところまで関わってないんで。」


「前から思ってたんだけどさ。なんでそんな他人事なの?」


次女が苛つきながら私に噛みつこうとした時、義父が助け船を出してくれた。


「みんな、座って。お年玉渡すから。」


「はーい。」


 義父がそれぞれにお年玉を渡す。
その時の彼の顔が、年金生活者となった今、威厳を保てる瞬間のそれになる。
子も、その時ばかりは礼儀正しく受け取り、にっこりありがとうと言うのだから憎めない。

食事中、やはり義姉らが会話を回す。
子の高校生活を何となく聞いた後は、あいちゃんのピアノでの活躍と今後の進路の話。
それから甥っ子が今年は大学受験の年に入るので、その話。
三女が仕事の愚痴を言い出し、それにつられて次女が友達のカフェを手伝っている話、そこに芸能人が来たと騒ぎ出したが私にしたらどうでもいい詰まらない話だった。


「この人も、仕事頑張ってるからね。」



 突然、夫が私のことを指して義姉らにペラペラと話し出す。
来月には辞めることになるかもしれない今のパートのことなんて話して欲しくない。
しかも、かなり盛るから嫌になる。


「ふーん、でもパートでしょ?」


 次女が面白くなさそうに言う。
結局、私を下に見ることで安心したいのだ。


「そうです、ただのパートです。簡単な伝票処理とか入力とか、誰にでも出来る仕事です。」


 そんな仕事だったらどんなにいいかー、私の理想を述べたら、次女はすっかり安心しきった顔になる。


「そうだよね、芝生さん、単純作業とか得意そうだもんね。」


 私も自己肯定感は低いけれど、次女も結局、私と同じように自分に自信が無いのだなと思う。
話題が無くなり、いつも通り、次女と三女で盛り上がり楽しそうな横で、私と子はぼそぼそ会話をしながら食事を終えた。
嫁として、孫として、息子としてー、例年通り、無事に義実家へのお務めを果たせてほっとしている。




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