卒業式

卒業アルバム
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 義務教育最後の、卒業式。
夫も仕事を休み夫婦で参加。
幼稚園の頃から同じセレモニースーツを着用しているけれど、なんだか合わなくなって来たように感じるのは、私の顔も髪の毛も老けたからだろうか。
だが、新調なんて出来ない。
お金も無いし、主役は子ども。
300円ショップで購入したコサージュを胸に飾る。
それだけで身も心も引き締まる思いだ。


中学校最後の晴れ舞台

 体育館に入ると、既に保護者らが半数以上埋まっており、スネ夫ママや素敵ママの姿が目に入る。
こんなハレの日にまで彼女らを意識してしまう自分が悲しい。
席は自由なのだが、夫がスネ夫ママ達のいる方向にずんずん歩く。

「ちょっと、待って。あっちの方が写真撮りやすいと思うから。」

夫の腕をぐいと掴み、その動きを阻止する。
夫は不思議そうな顔をするが、すんなり私の言うことを受け入れてくれた。

 好きな席にすら座れない。
本当は、スネ夫ママ達の座っている席の方が子の座るであろう席に近いのだけれど、敢えてそれを夫に伝えなかった。

 音楽が流れ、子ども達が入場。
最近のように思える入学式を思い出す。
あれからもう3年も経ったのか。
マスクを外して行う久しぶりの式典。
子のクラスも入場し、夫と私はカメラを向けた。

 開会式と校長の挨拶が終わり、卒業証書授与式。
聞き覚えのある名前が呼ばれると、つい身を乗り出して確認してしまう。
あの子もこの子も大きくなった、成長したなと。
我が子の番になり、カメラを向ける。しかし焦って変なボタンを押してしまったりしてピンボケしてしまった。こんなところでも本番に弱い私。

ただ、檀上に上がる我が子の姿は目に焼き付けた。
ただただ、感謝の気持ちで一杯だった。


生徒代表の挨拶

 合唱、そして卒業生代表の言葉ーは、スネ夫ママの息子K君が答辞を読むことを配布された式次第で知り、何とも言えない気持ちになった。

 K君が檀上に上がった時、ちらっとスネ夫ママの方を見ると、喜々としてビデオカメラを回していた。彼女の取り巻き達も、自分の子どもでもないのにお付き合いなのか何なのか、カメラをパシャパシャしているようだった。

 K君の言葉は、綺麗過ぎてまったく心に響かなかった。
どこかのネットにあげられた答辞例文を丸暗記しているような。
それでもそれが我が子の言葉なら素直に受け取ることが出来るのだろうけれど。
スネ夫ママの息子だからどうしても真っ直ぐ受け取れないのだ。
スネ夫ママの嬉しそうな表情を妬む気持ちも少なからずあるのかもしれないけれど。

 校歌、そして閉会式。2時間足らずの式は終わり、保護者で花道を作り、解散。

撮影タイム

「俺のことはいいから、お母さん達と話してきたら?」


 子ども達が出て来るまで、どうしたって群れは出来る。
素敵ママや孤高の人、これまで少しでも私との関わりのあったママ達が楽しそうに群れる中、誰からも声を掛けられないことに夫が気付いてしまった。

周囲を見渡すと、父親達はスマホやカメラ片手にピンで立っている人が多く、私達のように夫婦でいるパターンは少なかった。
こんな時に気を遣ってくれなくてもいいのに。
私が何も答えないでいると、夫はまだ何か言おうと口を開けたが、そのタイミングで子ども達が出て来てくれた。

 花道を通る我が子。
私達に気付いてか気付かずか、すーっと目の前を通り過ぎ、そのまま学校門の前へ。
解散の流れとなり、教師や保護者が挨拶を交わす声、親からスマホを受け取りはしゃいで写真を撮り合う声に、卒業の香りを感じた。
素敵ママや孤高の人、スネ夫ママらが、ママ友達と子どもの卒業証書を持ってポーズを取るのが目に入る。

ーあんなにはしゃいでバッカみたい。主役は子ども達なのに・・

最後の最後まで、彼女らの言動に心かき乱される私。

「あ、あっちにいるぞ。」

夫の言う方に子はおり、友達同士で写真を撮り合っていた。
一人じゃないー、その姿にほっとする。私とは違う。良かった。



子どもの成長と共に変化するママ友関係

 その一方で、そそくさとボスママとその息子が学校の外に出るのを目にした。
中学校から、K君にハブられ文化系の部活に入り、存在感を消したN君。
あんなに太っていたっけ?ボスママは、一部のママさんに挨拶をしながらも息子の後をそそくさと追って出て行ってしまった。
スネ夫ママと疎遠になったのだろうか?

スネ夫ママは、サッカー部の保護者とわいわいしており、ボスママ親子のことなど眼中に入っていないようだった。あんなに仲良かった二人なのに、子どもを介するとどうしたって関係性は変わるのを目の当たりにした。

図々しさと積極性は紙一重

 テニス部の保護者とはあまり面識もなく、なので子と友達との写真は私が撮らなければ残らない。
でも、どうしても声を掛けるタイミングがつかめない。
子の周りにいる友達の保護者らしい集団に近付くことも出来ない。
そんな私の姿に痺れを切らした夫が、ズカズカとその輪に入り、

「はいはい!こっち見て下さい~」

子は、その声が自分の父親だと知ると気まずいような恥ずかしそうな顔。
友達から、

「え?花子のパパ?」

そう聞かれ、小さく頷く。
微妙な表情をしながらも夫のカメラの前でポーズを撮る子ども達。
その後ろで喋っていた母親らもカメラを向ける。

「はい、チーズ!」

「証書、ちょっと見せる感じで!」

「マスク取って!笑顔笑顔!」

「パパ、もうやめて~」

なんだかんだで笑顔をカメラに向ける我が子。そして、夫が子の父親で良かった、そんな風に思える瞬間がこうして時にあるのだ。

ー卒業おめでとうー

そんな二人の姿を見ながら、心の中、私も暖かな気持ちでお祝いの言葉を掛けた。

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