お助け猫

猫
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 「自分だったらどう思う?旦那が突然、はい辞めました~!次の仕事?決まってませーん。あり得ないだろう?」


 帰宅後、子が塾で留守なのをいいことに、夫から大声で詰め寄られた。
最近、自分の仕事がうまくいかないこともあり、覇気が無いかと思えば苛々したりと情緒不安定な夫の餌食になるのは御免だ。
だが、そう言われて反論出来なかった。


「花子のことだって、母親なんだから考えているだろう?大学進学にこれから金も掛かるし。あんた、呑気だからいい機会だと思って家計管理任せたのに、正社員になるどころか無職!?あー、主婦はお気楽でいい身分だよ、俺だって専業主婦になりたいわ。」


「今のところだと正社員途用は無理そうだったし、辞めるにしても年度の途中より迷惑が掛からないかと思ったから。」


 思い付く限りの言い訳をするけれど、夫は鼻で笑うと煙草を吸いにバルコニーに出た。
ほっとしたのも束の間、


「おい!やっぱり猫がいるぞ!!」


 お隣の猫の鳴き声を聞いたようで、怒り爆発。
私も慌ててバルコニーへ出るけれど、鳴き声は聞こえるものの姿は見えない。


「隣か?」

 鼻息荒く、隣にクレームを言いに行く勢いだったのでそれを制する。
隣だけれど、そうではないと嘘を付いた。


「お隣じゃないよ、だってお隣からも猫の鳴き声に困ってるって聞いてたから。」


 彼女達を庇いながらも、針金さんが私に向けたあの睨みを思い出し、いっそのこと全部ばらしてしまおうかなんて思いもよぎる。


「あー、疲れた!花子の迎え、行ってくる。」


 子の塾送迎の時間が迫っていたので、そのまま出て行った。
子が戻れば、さっきまでの夫婦の言い合いはまるでなかったかのように、私達は普通の父親と母親に戻る。隣の猫のお陰で助かった。
何も解決はしていないけれど、隠し事が一つ減り、肩の荷が降りた。




 



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隣の芝生
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