仕事がない

メモ帳 仕事
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 仕事が無い。
これまで中山さんから難しい作業を頼まれるか、そうでなければ小川さんから事務や雑務を頼まれていたのだけれど、ぽっかりやることが無くなってしまった。
何かやることはありませんか?を中山さんに聞く勇気はない。
また、しんどいキャパオーバーの作業を振られたらたまったものではないし、もうここずっと彼と会話らしい会話をしていないので、今更どんな声で話し掛けられるっていうのか。
怖いのだ。

中山さんがトイレに立った隙を見計らい、小川さんの元へ行き声を掛けた。
タイミング悪く、派遣の人に作業を振っているところだった。
私がてんで使えなかったAccessで作業をやって貰おうとしているようだ。
私も入社して数日後、出来るか聞かれたけれど、見たことも聞いたこともないと答えてその仕事は結局小川さんがやることになったのを思い出す。
確か、データの加工?のようなこと。皆が使うデータをいじることなど到底無理。私はAccessの勉強以前にその責任の重さから逃げたのだ。


「どうしました?」


 背後に突っ立っている私に気付き、小川さんが顔を上げた。
何かやることーと聞くと、後でそちらに行きますと口調は丁寧だけれどちょっと面倒臭そうに言われてへこむ。
そして、運悪く中山さんがデスクに戻った時に彼女が来るものだから、本当に気まずい。


「今って、何も作業持ってないんですか?」


「あぁ、はい。」


 小川さんがちらっと中山さんに視線をやったので、彼に何か尋ねやしないかとドキドキしたけれど、今度は運良くリーダーが中山さんを呼んだことでようやく彼女と2人きりになれた。


「今、ちょっとやって貰えそうな作業が無いんですよね。ちょっと探してみますから、待って下さい。」


 彼女の困惑した顔に、時間を奪っている申し訳なさに咄嗟に言葉が出た。


「あの・・年末ですし、大掃除とか。掃除なら、以前、清掃の仕事をしていたことがあるので。任せて下さい!」


 一瞬、彼女がぎょっとしたような表情をした。言葉を変えれば、引いている感じ。
変なことを言ったかなと思ったけれど、やることが無いのだ。
ぼーっとデスクに座っているよりも、まだ時給発生分、何かしら働いた証を残したい。
日報にだって、書くことが無いのは困る。

「え・・と。ちょっとそれは。うち、プロの清掃業者の方が入って下さっているので。」


 顔から火を吹くというのは、こんな時。
やはり、私の申し出はおかしかったのか。

やることが無いと、時計の針の進みも遅い。
デスクに座り、以前、プリント間違いした用紙を裏紙としてメモ帳作りをする。
皆、私以外があくせく忙しそうに働く中、居場所が無いというか、ここにいてよいのかと鬱々とする。
30分程して、小川さんがなんとか私の為にやれる作業を作ってくれた。
それは正直、今でなくても良さそうな作業だった。


「ゆっくりでいいですからね、年明けからやって貰おうと思っていたものなので。」


 最近よくやらせてもらっている、コピペ作業。
大量にあるけれど、何度もするうちに眠くなり逆に間違えたこともある作業。
これも、時間が経つのを遅く感じる仕事だ。
仕事が無いというのも、辛い。



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