高級ベーカリー

ベーカリー 生活
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 パートを終えて、ふらふらになりながらも猛烈にパンを食べたい衝動に駆られ、以前から気になっていた職場近くのベーカリーへ寄った。
都内でも、行列が出来る店。
平日だというのに、昼時ということもあってか賑わっている。
自分でパンを選んでトレイに乗せるのではなく、カウンター越しに欲しいものをオーダーするタイプ。
ショーウィンドウには、ハードなものからソフトなもの、惣菜系や甘い系など多種多様のパンが並ぶ。
美味しそうーと思った瞬間、腹がぐーっと音を立てた。
しかし、値段を見て躊躇する。
一つ、300円以上はくだらない。あの大きさで380円??
並んでしまったのだが、自分の昼食のパン一個に物凄く悩み始める。
二つ買ったら1000円弱は贅沢だから、一つ買って、あとは家で余ったご飯を丸めて冷蔵庫に入れたものをお茶漬けにしよう。
そう決めて、チーズとベーコンのハードパンを買うことにした。
私の前に並んでいたマダムと思われる女性が、次々とオーダーする。


「カヌレ4つと、クロワッサン3つと・・」


 あとは横文字がすぎて忘れたけれど、随分洒落た名前のパンを次々とオーダーしていた。
カヌレもあんなに小さいのに400円近い。
レジで会計をする人達。
それぞれ、いくつも購入しているのだろう。2000円~4000円近い支払いをする人々。
自分の家庭との格差を感じる。
お金に困っていなければ、何も考えずに家族の分もぽいぽい選んでオーダー出来るのに。
頭の中で、家計管理を任された私はつい計算してしまう。
自分のポケットマネーで買う自分の昼ごはんだからいいじゃない。
そう思う一方で、なんだか後ろめたい気持ちになった。


 夫だって、これまで家族をないがしろに贅沢をして来たのだ。
私や子がちくわをうなぎ代わりに蒲焼にして土用の丑の日をしている時、高価なうな重を食べていたことだってあった。
300円ちょっとのパンくらいー


 なのに、私はふっと列から外れた。
とぼとぼ歩き、結局、自宅近くにある馴染みのパン屋へ。
180円のチーズパンを買う。
リーズナブルだ。だが、私が本当に食べたかったハードとは違う、ソフトフランス的な生地のパン。
なんだか中途半端な気分でお腹を膨らませ、満足したのかしないのか。
食べたいものを食べたい時、値段を気にせず食べること。
それが出来るのは、このご時世、一握りの人間だ。







 

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