新クラスのアウェイ

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 朝、トイレからなかなか出て来ない我が子を心配し、声を掛ける。
ここ最近、ずっとそう。登校時間が近付くと腹痛が起こる。
こんなこと、前にもあった。嫌な記憶が蘇る。

 順調にスタートを切ったと思っていた高校生活だが、2年のクラス替えにより、友達0クラスで振り出しに戻ってしまった子。
1年の頃は、最初に仲良くなった子が性格もよく社交的なうえ、クラスの雰囲気も良かったことで雪だるま式に友達が増えたようだったけれど、今回のクラスは完全アウェイ。子が言うに、自分以外は皆グループががっつり出来ており、入る隙もないらしかった。
恐る恐る、聞いてみた。


「お弁当とか、どうしてる?」

「今のクラス、終わってるから友達のクラスで食べてる。」


 今回のクラスは、1年の時と毛並みが違うらしく、THE・体育会系の部活女子が多いのだという。
1年生の時の友達は、帰宅部でバイトをしていたり街で放課後遊んだりと緩く楽しい付き合いが出来る子達が多く、その子達からメイクなどを教わり、お泊りやディズニー、それに推し活などの影響も受けて楽しい高校生活を送っていた。
遊び過ぎだと思いながらも、子がキラキラと充実した日々を送る様子を見て嬉しかったし、こんな日々がずっと続くのだと安心もしていた。

今回のクラスは体育会系。その空気感に馴染めない我が子。
この1年間、部活を通し放課後や休みの日に親交を深めて行った絆は固く、そんな彼らとの共通項を見付けられないのだ。


「初日から、部活同士でがっつり固まってるからね。皆、必死過ぎ。吹奏楽とか10人近くがっつり固まってるから笑う。」


 子の高校は、吹奏楽が強い。文化系といっても体育会系に勝る練習量とストイックさを求められているのだそう。

「でも、一人の子とかいるでしょ?部活入ってない子とか。そうでなくても同じ部活の子となれなかった子だっているはずじゃない?そういう子に話し掛けてみたら?」


「いるけど、合わないと思う。一人は、アニメ好きっぽくてずっと自席でイラスト描いてるし、もう一人はずっとイヤフォンしてスマホ見てる。」


「でも、話し掛けてみたら案外ってこともあるよ。もしかしたら、推しが同じだったりとか。」


「いや、どっちも集中してる感じだし、話し掛けたら迷惑でしょ。それに、趣味も合わないと思う。」


 恐らく、子から彼女らに話し掛けたりはしないだろう。話し掛けられたとしても、仲良くなれそうもない。

ただ、今のクラスに馴染む努力を放棄するのはまだ早いのではないか。
2年生は修学旅行もある。子の学校は南方面に決まっているけれど、楽しい思い出を作って欲しい。
まだスタートを切ったばかりだし、これがGW後になればもっとグループは固定されると思う。
今はまだ仲良く見せ掛けてーということもあるだろう。
大きなグループは、いずれ分裂するしばらける。まだ見極め段階だと思うのだ。

よりによって、2年のクラス替えで撃沈の我が子。これが3年だったら良かったのに・・
3年生でハズレクラスだったとしても、受験年だから勉強に専念すればいい。


「友達も、あのクラスはキツイよね~って言ってる。中学生のノリなんだよね。」

 上から目線で語ることで、自分の立ち位置を惨めなものにしたくないのだろう。
本音は辛いはずだ。
だが、そのしんどい思いを本人は認めたくないだろうし、まして親に知られたくないだろうし、だから的確なアドバイスを与えられない。
ただ、子の今の気持ちは痛い程に分かり過ぎる。
助けてあげたいし、力になりたいと思うけれど何も出来ないことが歯痒い。
母として、一緒に教室に入ることは出来ないし、もう高校生なのだ。

 子の好きなおかずを弁当に入れたり、気が向いた時に愚痴る子の話に耳を傾けたり、太陽の光に布団を充てて、ぽかぽかな寝床を用意したりー
そんなことでしか母としての役割は果たせないけれど。
最後の手段、神頼み。
近所の神社で手を合わせた。

ーどうか、子が子らしくいられる友達と出会えますようにー






 


 

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