おしどり夫婦

手 わたし
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 仕事帰り、ふらふらになりながらスーパーに寄り、駐輪場から自宅まで自転車を漕ぐ。
今日も、疲れた。こんな日は、外食したい気分。
だが夫も子も今日は夕飯が要るようなので、取り合えずすぐ出来る焼きそばと焼き魚、それに冷ややっこと味噌汁にしようと決め、だがもう一品何か子が喜ぶおかず・・と考えた後、チーズ系の何かが良い!と思い付いたが、チーズを切らしていたことを思い出し、またスーパーに戻るのも面倒だし近所の小さなマーケットに寄ることにした。
この店は、割高なので滅多に行かない。だが、塩や醤油や卵や牛乳だけが欲しい時など、コンビニまでの距離すら面倒な時には重宝している店なのだ。家から本当に近い。

 チーズ売り場へ行き、さあレジへ・・と何気なく店内のミラー越しに針金さん夫婦を発見した。あー、挨拶が面倒。気付かないふりでレジまで行こうと決めた時、彼らがワイン売り場でささやき合いながらボトルを選んでいるのが見え、その手元に目が行く。手と手を絡ませていた。しかも、恋人繋ぎ・・
正直、私や夫よりも年上で、恐らく還暦は過ぎているのでは?なのにあんなにラブラブなの?針金さんもご主人も恋人同士のようにとろけるような笑顔を浮かべていた。あまりにも衝撃で、ミラーから視線が外せずにいたら、くるりと振り返った針金さんとミラー越しに目が合った。

ーまずい!!!

 すぐに踵を返し、レジへ行くのすらやめてチーズを棚に戻して外に出た。
心臓をバクバクさせたまま、停めてあった自転車にまたがり、大急ぎで家まで向かう。悪いことなど何もしていないのに、まるでまずい現場を見られたかのように逃げ帰った。見てはいけないものを見てしまったようなー、そして以前目にした、彼女宛の小包の中身を思い出してしまった。
とっくに手放していたはずの何とも言えない感情が、体のずっと奥で小さく疼く。この敗北感は、なんだろうか。
 




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