結婚願望

ドレス
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 「結婚は、したくない。」


 義父の事故で集まった時、子が義姉らに聞かれてそう答えるのを聞いた。
彼氏はいるのか?という会話から発展したようだ。
子の年上である甥っ子や姪っ子には既に恋人がおり、結婚話はまだにしてももうそういう年頃になったのだ。


「今の時代、結婚なんて馬鹿らしいわよ。いいじゃない、若いのにはっきりしてて。」


 三女は自分も独身を貫いているので、子の答えに満足しているようだ。


「なんで、結婚したくないの?」


 義母が聞く。すると、何とも言えない答えが返って来た。


「パパとママ見てるから。あぁいう風になりたくない。」


 何とも意味深な答えに私の居心地は一気に悪くなる。
夫は義兄らと事業の話をしていたのでこちらの会話なんて露知らず。矛先が私に向かいそうで落ち着かない。
ただ、空気が一瞬凍り付いたのも束の間ー、義母が義姉らが余計なことを言わぬよう先回りをしてくれた。


「そんなものよね。子どもって、親のようにはなりたくないって思うものなのよ。でもそれは良いことよ。だって、親は子どもに自分達以上になって欲しいって願うものだからね。」


 それで会話は終わったけれど、私は釈然としなかった。
数日経って、子と二人きりになった時、改めてあの言葉の真意を聞いた。


「結婚したくないのは私達みたいになりたくないからって言ったよね。あれってどういう意味?」


 声が尖らないよう、努めて明るく尋ねた。


「あぁ、あれ?・・だってパパもママも嘘ばっかじゃん。なんかそういうの昔から嫌だったんだよね。パパは外で何してるか分からないし、ママは何考えてるのか分からないし。パパの顔色ばっかり窺って。」


 虚を突かれ、言葉を失った。
嘘ばかりー我が子に私達はそううつっていたのだ。もう随分昔から。
そしてそれは本当のことだから、何も言い返せなかった。


「だから、結婚に夢とかないんだよね。面倒臭そうだし。」



 結婚願望が無いと断言された。
その原因が私達夫婦にあるということ。
結婚がイコール幸福に結び付かないという解答を、歪な家庭環境の中に悟ってしまった我が子。
修復は可能なのか?
ただただやるせない。








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