引きこもり

麻婆豆腐 夫
夫
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 パートから帰宅すると、玄関には夫の靴。
だが、どこにもいない。
部屋をノックすると、寝ぼけたような声が返って来たので、一瞬の不安と心配はすぐに怒りに変化する。何故、連絡のひとつも寄越せないのか?

「大丈夫?」

 なのに、心とは裏腹に良い妻を演じてしまう。
朝帰り、いったいどこで時間を潰していたのだろう。そして今日は仕事もせずに一日家に引きこもり、何を考え何をしていたのか。

パートで疲れ果てている老体にムチを打ち、急いで夕飯を作る。
すぐに出来る麻婆豆腐ともやしと豆苗のナムル、野菜がばか高くてどうしてももやし頼み。それでも、もやしですら値上がりの風が吹きかけているものだからたまったもんじゃない。
卵とねぎとわかめとえのきの中華風スープも作る。本来なら、これに餃子の一皿を足せば、夫は満足するのだが、私も朝から夕方まで神経を使う仕事をして帰宅するようになり、専業や週1午前パートの時のように動けない。これでも頑張っている方だと思う。

「ご飯、出来たよ。」

 声を掛けるが返答がない。
子もバイトがなく学校からも帰宅し、珍しく一緒に食卓を囲める日。

「ちょっと、パパ呼んで来て。」

「はーい。パパ~、ご飯だって。もう出来てるよ。」


 何度も子が声を掛け、だがドアは開かない。


「要らないって。食欲がないみたい。」

「え?具合悪いの?」


 もう一度、ドアの前から声を掛ける。
体調不良だろうか?


「要らない・・」

 か細い声が聞こえる。
いつもの、自信に満ち溢れた俺様気質の夫はどこへ?
すっかり引きこもりではないか。

「一応、冷蔵庫にご飯入れておくから。食べたくなったらレンジで温めて食べて。」

 この日、テーブルの上にバイク売却の売買契約書が置かれていた。
その額は、夫が見積もっていた額より低く、こういうことがきっかけとなり、表面張力が限界に達するのではないかーそんな不安がよぎった。

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