素敵なおうちと昭和のおうち

アイランドキッチン 生活
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 買い物帰り、郵便局に用事があり、いつもとは違う道を通る。
ふと、素敵ママの家の辺りだと思い出した。
もう何年も会っていないし話していないし、子ども同士も関係ない。すっかり他人。いや、元々他人ではあったけれど。きっと、スーパーで鉢合わせしても、向こうも素通りするだろう。それくらいに私と彼女の縁は一時のものだったのに、最初は親切だと思っていた彼女に抱いたざわりとした不信感は、今もまだ心に残り続けている。

ーあれだ、あの家。

 相変わらず、洒落た家。外壁もトレンド色で、全体的にスタイリッシュ。庭も駐車場もあり、家も大きい。ここら辺の相場を調べてみたことがあるけれど、数年前でも6000万円以上した気がするから、今ならきっとそれ以上ー下手したら1億までは行かずともそれなりの価格に上がっているだろう。
そして、同じ区画にある昔のお隣ー酒井さんの家の前も通り過ぎた。こちらも素敵ママと似通ったデザインの家で、同じハウスメーカーが作ったものだろうか。外壁のカラーは違えど、屋根や外観の雰囲気はまるで双子のようにそっくりだ。

2人共、10年前は同じ場所に住んでいたのにー・・薄い下唇を噛み締める。

彼女達の経済事情は外側からだけでは分からないけれど、もしかしたら多額のローンを抱えているのかもしれないけれど。
それでも毎月家賃をドブに捨てている私達よりも、着々と資産としての支払いをしつつ、また素敵なおうちでの暮らしを満喫している彼女達が羨ましい。
きっと、素敵なシステムキッチンで、物価高など気にせずフレッシュな野菜や果物、柔らかく分厚いお肉や身の引き締まった魚を並べ、ジャズなんかを聞きながら鼻歌混じりに愛する家族の為に料理を作る彼女達は、私とは違う世界線に住んでいる。
我が家の古臭い昭和のキッチン、パートから帰宅し、スカスカの冷蔵庫から取り敢えずあるものをーもやしと豆苗を取り出し、なんとか見栄えの良いおかずを作ろうと頑張るも、なんだかみすぼらしいTHE・節約料理。調味料がそういう時に切れていて、鼻歌の代わりに舌打ちをする。茶色くボリュームのないおかずばかりが並ぶ食卓。だが、夫も子も揃っている時は少しばかり贅沢をする。プラス一品か二品増やし、安いハムでカツを揚げる。コンロは二口しかない癖に、左側が調子が悪くて使えない時すらある。そういう時は本当に苛つくし、右側だけでメインと汁物と副菜を作らなくてはならず、いちいち鍋やフライパンをいったん別の場所に置いてを繰り返すことに疲れ果てる。

 それにお風呂ー。
彼女達は、お洒落なまるでホテルに設置されているような寝そべることも出来るバスタブに、香りの良いバスボムを入れて、薄暗くライトを調節し、半身浴で一日の疲れを取る。テレビを観たり読書をしたりなんかして。
一方私は、狭くて微妙に深いひび割れを起こし掛けている風呂釜に体育座り。タイルの壁は、何度こすっても落ちないが黒カビが目地に沁み込んでいる。天井もシャワーも何もかもが昭和。床と浴槽の隙間がかなり空いており、そこは入居する時から汚れが目立っていたが、あれから10年以上、更に劣化に磨きがかかっている。
風呂場のドアも、古いタイプのもので閉まりきらないうえに割れている部分があったりで、本当に嫌になる。
お風呂で優雅に半身浴ーなんて気分には到底なれない。

洗面台も狭くて黄ばみが目立つ。フローリングもあちこち傷だらけで畳も同様。壁紙も剝れている箇所をだましだまし百均で買った壁紙シールを張り付けて誤魔化しているけれど、白色といっても微妙に素材も明るさも違うから目立つし貧乏臭い。

 不満は上げたらキリがない。しかし、身の丈に合った暮らしー、それに尽きる。
私達には、彼女達が住んでいるような豪邸など高望み。
夫が自営を始めていなければあったかもしれない未来だけれど、それだってタラレバの夢物語だ。
せめて家賃が安ければ。場所が都内というだけで見合う家賃ではないこの状況。
子も大学生だし、学区にこだわることもない。
田舎でもいい、どこか別の場所に引っ越したい。




 


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