事務パートの異動話、引き受けるつもりで意気込んでいたところに花山さんから要らぬ情報が。
まるで、私の心の揺れを見透かすように、
「あそこに異動してくれって言われても、私は行かな~い。時給が500円あがっても正社員登用するって言われても、絶対に行かな~い。」
うっかり異動の件について口が滑ってしまった私が悪いのだけれど、後から知られて気まずい思いをしてもなーと思い、流れでそういう話があって受けようか迷っていると伝えたのだ。
「芝生さん、やめときなって。前のパートさんはなんとか半年続いたみたいだけど、その前は一か月だって。ていうかさ、捨て駒だって。このままここにいた方が楽じゃない?仕事は増えたかもだけど、さすがにもう慣れたでしょ?米田さんはうざいかもだけど、パートは一人じゃないし。黒ちゃんは社員になるっていっても私達より後に入ったパートだもん。顔色見るのは米田さんだけでいいし。何かあれば、うちら同期だしさ。協力出来るし。」
木佐貫さんが休職になり、黒川さんが社員になるかもという流れになってからというもの、花山さんが私にべたべたして来た。あんなに塩対応だったことが嘘のようだ。こんなにコロコロ変わる人間は信用出来ない。だが、彼女からの情報をスルーすることも出来ない。彼女は社交的で、いつの間に人事スタッフと飲みに行ったりもしているようだから、あながち嘘ではないと思う。
要するに、捨て駒?いくら同期だからって失礼にも程がある。さすがにカチンと来てしまった。だが実際、彼女の言う通りかもしれないとすぐに凹んだ。
捨て駒という言葉が頭をぐるぐる回る。
初めてなのだ。なんだかんだでこんなに長く続けられたパートは。異動で捨て駒になりまた無職になること。新しいパートはここに比べるとかなり居心地が悪い。ここも仕事が出来ず何度も辞めたいと思っていたけれど、要するにすべては比較からなっている。A単体では辛かったことでも、Bという比較対象が出来たことで、Bの方が辛い、Aの方がまだマシだと思える不思議。そして、もう少し頑張ってみようか・・とネガティブな理由ではあるが前向きになったりもする。
この日はフルタイム出勤だったので、昼は花山さんとランチをした。というか、休憩室でおにぎりを食べようとしていたら彼女の方から声を掛けて来たのだ。朝、パン屋で買ったらしいサンドウィッチを持って。きっと、もうすぐ社員になるだろう黒川さんと米田さんの仲に入って行けないのだ。
「捨て駒」を連発する彼女を前に、すっかり私は意気消沈だ。
