1時間勤務・3時間給与

医務室 週3パート事務
週3パート事務仕事
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 「この間と同じ感じで、お願いします!」

 朝一で、さらっと業務の依頼。
付箋ではなく、直接話し掛けられたことで、ようやく認められたんだなと嬉しい気持ちの反面、渡されたデータと指定されたExcelを見て愕然とする。
先日も依頼されたあの作業。花山さんにほぼ手伝って貰ったアレ。
同じ感じ?って・・
さっぱり分からず、サジを投げ、同期に殆どやってもらったあの仕事だけれど、田口さんはすべてパートの私がこなしたと思っているし、しかも感謝もしてくれた。本当に彼女の役に立ったのだろう。だからこそこうして直に頼んで来たのだ。

 さて、どうする?
困ったーと気ばかり焦り、頭も真っ白。
見よう見まねで、先日作業したファイルを探し出し、並べて見様見真似でやってみるけれど頭が混乱。分からない。何がどうなってこうなるのかー。
つい、花山さんを目で追うけれど、彼女のPCから少しだけ頭が見えるだけで微動だにしない。業務に追われている感じ。期限は、今日まで。先日の完成しているファイルとまったく同じ形式ではないからコピーして使うことも出来ない。同じ感じだけれど、同じではない。だから理論を理解出来てなければ作成出来ない。
勘で計算式を組み合わせてみたり、ネットで調べてー職場のジェミニーに聞いてみたりもするけれど、欲しい数値が出て来ない。私の命令文がきっとおかしいのだろう。AIが、いずれ事務職の仕事を失くすとか言ってるけど、まだそれは先の話のようだ。こうしてAIで解決出来ない仕事があるのだから。

 気を落ち着かせる為に、トイレへ。用を足し、手洗いを済ませ顔をあげると、突然、ぐらりとめまいがした。そしてよろけて壁に手をつく。

「大丈夫ですか?」

 トイレに入って来たのは、佐藤課長だった。
いつものクールな感じではなく、心底、心配してくれている表情に気が緩む。

「だ、大丈夫です・・」

 壁から手を離すと、またぐらりと頭の中の脳が揺れる感じがして座り込んでしまった。
なんだこれー

「ちょっと、医務室へ行った方がいいと思います。歩けます?」

 彼女に連れられ、医務室へ行くことになった。
簡易ベッドも置かれているそこには、常駐の看護師のような者はおらず、代わりに人事総務の担当の人がやって来た。

「ここで少し休んで、今日は早退して下さい。」

 佐藤課長はそう言い残し、その場を去って行った。
人事の人は、手当をするとかではなく、単に私に急変があった場合に救急車を呼ぶーとかそういう役割を担っているのだろう。何かあれば言って下さいと声を掛けた後、カーテン隔てた省スペースで何やらノートPCで仕事の続きをしているようだった。

ベッドに横たわり、だいぶふらつきが治まったことを確認し、午後休を取ることにした。
しかし、田口さんから依頼されていた仕事はほぼ手付かずのまま。皆が昼休憩の時間、デスクに戻ると課長だけはまだ仕事をしているようだった。

「すみません、お先に帰らせて貰います。」

「あ、はい。気を付けて下さい。」

「あの・・田口さんから頼まれていた仕事が全然出来てなくて・・」

「大丈夫です、伝えておきますから。今日はゆっくり休んで下さい。」

  
 きっぱりとした口調に、むしろさっさと退社した方が良いのだと感じ、挨拶をして職場を出た。
1時間しか仕事をしていないのに、しかもその成果はゼロなのに、退社した時間が昼過ぎだから3時間の勤務として給料が発生することに、来て良かったという気持ちと罪悪感とが綯交ぜになり、こんな時まで金勘定をしている自分が卑しい人間に思えた。

 今月に入って、何度目だろう。体調不良に不安をおぼえる中、だが、あのExcel作業をしなくて済んだことに安堵している自分。嫌過ぎて、体が拒否反応を起こしたのだろうか?
外は、半袖でも良いくらいの夏日。眩しくて、太陽の光に再びくらっと視界が揺れる。
なのに、ぐーっと腹が鳴る。自分の体が意思とは関係なく、支離滅裂に動いている。


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